研究実績の概要 |
化石燃料消費に伴う地球温暖化や日本における原発事故の問題から、再生エネルギー開発に拍車がかかっている。とりわけガソリン代替燃料としてのバイオエタノール生産は実用化が拡大されているが、原料供給と価格面で問題を残している。 本研究は未利用資源である褐藻廃棄物から効率的にバイオエタノールを生産するため、褐藻体内のラミナラン糖化酵母を創出することを目的とした。褐藻の糖化と発酵の温度を一致させるため、海洋低温菌由来のラミナラナーゼを探索し、相模湾由来のPseudoalteromonas haloplanktis LAを単離した。 LA株のラミナラナーゼPhLamは活性部位(CD)の分子量34.0MDaで、CDの下流に多糖類結合部位(CBM)と判断されるX1, X2, X3の繰り返し配列を持つ新奇酵素であった。PhLamはラミナランを分解して、酵母が発酵可能なグルコースを生成することがわかった。 PhLamを酵母Saccharomyces cerevisiaeでクローニングして、細胞表層提示を行った。CDを持つ組換え酵母は細胞表層にラミナラナーゼ活性を持たないが、CD+CBM(X1~X3)を持つ組換え酵母は細胞表層にラミナラナーゼ活性を有しており、褐藻糖化酵母を創出することができた。 一般酵母はラミナランを発酵することはできないが、褐藻糖化酵母はラミナランを発酵してバイオエタノールを生産した。今後は創出した褐藻糖化酵母のバイオエタノール生産の安定化と更なる効率化が課題である。
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