担当者は本研究に先立ち、魚油を含む魚肉すり身型食品中間素材の開発研究に取り組む過程で、魚肉水溶性タンパク質や糖類が魚肉すり身の乳化能や乳化安定性を高めることや、魚油の微粒化がすり身の加熱ゲル形成性能を高めること等、これまでに想定されていなかった各種現象を見出したが、目標とするEPA・DHA機能性食品中間素材の製造技術確立のため、更なる現象解明やメカニズム解明が必要であった。そこで、本研究においては、これまでに見出された各種現象を定量的な指標により裏づけるとともに、産業へ応用拡大を図るための取り組みを行った。 24年度においては、魚肉すり身に乳化混合した魚油(トリグリセリドタイプ)の凍結解凍時の分離をポリオールが抑制する効果について各種指標を用いて評価し、それぞれの乳化安定化効果評価指標としての有用性を明らかにした。 25年度においては、高速攪拌によって微粒化した魚油がすり身の加熱ゲル形成性や保水性を高める現象について、とくに添加する油脂の性状に着目した検討を行った。融点の異なる油脂類をモデル的に用いて得られた乳化すり身の性状を比較し、油脂の融点がすり身中の脂質粒子の分布状態に大きく影響することや、融点が低いほど加熱ゲル形成性を高める傾向のあることを示した。 26年度においては、乳化魚油がバルクオイルよりも高い酸化安定性を示す現象について、これまで確認されていなかった高濃度タンパク質系であるすり身中における安定性を検討した。ソーセージタイプのモデル系を構築することにより、魚油の微粒化が酸化安定性を高めることが示された。また、真空処理は乳化魚油の酸化安定性を高めるが、安定な乳化状態を調整後に空気を混合しても酸化安定性が保持されることが示された。 以上のように、本技術の実用化に向けた種々の取り組みにより、乳化すり身の有用性を裏付ける成果が得られた。
|