平成24年度および25年度にそれぞれ構築した甲殻類および魚類アレルギー発症モデルマウスを用いて,今年度はアレルギー発症に関与する遺伝子群の特定を目的に,cDNAサブトラクション法により,甲殻類および魚類アレルギー発症時に特異的に発現する遺伝子の検出を行った. すなわち,甲殻類アレルギーとしてのエビアレルギー発症マウスおよび魚類アレルギーとしてのマサバアレルギー発症マウス,さらにはそれらの未発症マウスから抽出したTotal RNAからcDNAを構築した.その後,PCR-Select cDNA Subtraction Kitを用いてサブトラクションを行い,発症-未発症間で発現量に差のある遺伝子を濃縮した. つぎに,PCR増幅による特異遺伝子を検出するために,アレルギー発症時に特異的に発現すると予想された遺伝子群(IL-4,5,13,18,NF-κBおよびTGF-β)の種間配列をもとに特異プライマーをそれぞれ設計した. その結果,IL-5が甲殻類,魚類アレルギー発症マウスにおいて,特異的に発現量が増加することが認められたことから,魚介類アレルギーの発症にIL-5が少なからず関与していることが示唆された.IL-5は,インターロイキン-5と言われ,アレルギー性鼻炎,喘息およびアトピー性皮膚炎のようなアレルギー疾患との関連がすでに報告されており,主として活性化T細胞および肥満細胞より産生されることが知られている.B細胞や好酸球の活性化,増殖・分化に重要な役割を演じるサイトカインの一種であるが,好塩基球のヒスタミン遊離の増強作用も確認されている.したがって,魚介類アレルギー発症時に好酸球の増多を伴う炎症性疾患が起こることが考えられた.
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