研究課題/領域番号 |
24580303
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
山口 健一 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 准教授 (90363473)
|
研究分担者 |
小田 達也 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 教授 (60145307)
桑野 和可 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 准教授 (60301363)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 該当なし |
研究概要 |
ウシケノリ科アマノリ属スサビノリP. yezoensisと同科のポルフィラ属P. columbinaにおいて、乾燥に伴ったフィコエリスリン(PE)とフィコシアニン(PC)の顕著な増加が観察されており、PEやPCが乾燥時の酸化ストレス耐性に関与するタンパク質性因子であることを示唆する報告がなされている(Contreras-Porcia et al., JXB 2011)。そこでまず、P. yezoensisにおいても同様に、乾燥に伴うPEやPC、またその他のタンパク質の顕著な増加が観察されるか否かを検証するため、乾燥過程にサンプリングした藻体の分光学的解析と比較プロテオーム解析を行った。その結果、タンパク質の顕著な量変化は見られなかったため、P. yezoensisは、P. columbinaとは異なり、乾燥耐性賦与タンパク質を予め著量蓄えて乾燥に備えているものと推察した。乾燥耐性賦与タンパク質を探索するため、二次元電気泳動(2DE)により分離した主要タンパク質スポットのMS/MS分析を進め、乾燥耐性関連タンパク質ホモログの同定を試みた。その結果、高等植物の胚形成後期主要タンパク質LEA_4と配列類似性をもつタンパク質、抗酸化酵素(Mn-SOD)、他の生物のタンパク質と配列相同性を示さないアマノリ属に固有と考えられる新規タンパク質を見出した。また、紅藻には2DEでの分離を阻害する物質(酸性多糖やミネラル)が多量含まれているため、高解像の分離パターンを得ることは従来容易ではなかったが、酸性グアニジン・フェノール・クロロホルム法を用いたタンパク質抽出法を適用することで、高解像の分離パターンを再現よく得ることが可能になり、微量タンパク質の分離とMS/MS分析による同定も可能となった。一例として、葉緑体のタンパク質合成に不可欠な翻訳伸長因子EF-Tsを同定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に述べたように、P. columbinaにおいては乾燥過程で顕著に増加する(生合成される)タンパク質がP. yezoensisにおいては見られず、当初計画していた乾燥過程にサンプリングした藻体の比較プロテオーム解析を軸とするアプローチでは、乾燥耐性関連タンパク質の同定が不可能であり、乾燥耐性関連タンパク質の発現と酸化ストレス応答の関連づけも困難であることが判明した。そこで、乾燥耐性賦与タンパク質を探索するため、2DEにより分離した主要タンパク質スポットのうちから任意に選んだ約100個についてMS/MS分析を進め、乾燥耐性関連タンパク質ホモログ(他生物種の乾燥耐性関連タンパク質のオーソログ)の同定を試み、乾燥耐性賦与候補タンパク質を複数同定できた。また、酸性グアニジン・フェノール・クロロホルム法を用いたタンパク質抽出法を適用することで、高解像の2D分離パターンを再現よく得ることが可能になり、微量タンパク質の分離とMS/MS分析による同定も可能となった。一例として、葉緑体のタンパク質合成に不可欠な翻訳伸長因子EF-Tsを同定した。興味深いことに、P. yezoensisの葉緑体EF-Tsの構造は、高等植物や緑藻の葉緑体EF-Tsとは大きく異なり、バクテリアのEF-Tsとよく似ていることがその分子サイズとアミノ酸配列から強く示唆された。以上のことからおおむね順調に進行しているものとした。
|
今後の研究の推進方策 |
スサビノリのプロテオミクスによる乾燥耐性賦与候補タンパク質の同定をさらに進めるために、ラージゲルを用いた2DEによる高解像分離とスポット検出数の向上をめざしたい。これまでに乾燥耐性賦与候補タンパク質をいくつか同定できているが、ESTをデータベースとしたMS/MSイオンサーチ法によるホモログ検索であるため、得られた配列は部分配列である。バイオインフォマティクスによるストロマ局在性に関しては推定不可能であったため、前駆体タンパク質のN-末端領域をコードする塩基配列のシークエンシングが必要である。最近、スサビノリゲノムの概要配列が公開されたため、そのデータベースを独自のMASCOTサーバに登録し、これまでに得られたMS/MS ピークリストを再検索することにより、さらなる同定やオルガネラ局在性の推定が進展するものと期待している。LEA_4様タンパク質については、精製を進めると同時に、その特徴的な11-merモチーフをペプチドとして合成し、モチーフ単位で乾燥耐性賦与活性を有するか否かについても検討したい。その他の今後の研究の推進方策については、当初計画のとおり、葉緑体リボソームのタンパク質組成解析と無細胞タンパク質合成系の構築を平成25~26年度に行うことを予定している。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|