研究概要 |
本研究では、スサビノリ葉緑体タンパク質合成系の乾燥耐性メカニズムを調べることを目的とし、乾燥過程で蓄積するタンパク質(酸化ストレス応答タンパク質等の乾燥耐性関連タンパク質)を解析し、葉緑体リボソームの構成タンパク質を明らかにすることを当初の研究計画に挙げた。平成24年度の2次元電気泳動を用いたプロテオミクス実験により、乾燥過程で量変化を起こすタンパク質は観察されなかったため、スサビノリは予め乾燥耐性関連タンパク質を蓄積しているものと推察し、主要タンパク質スポットのMS/MS分析を進めることで乾燥耐性関連タンパク質として知られるLEAと物理化学的性質が似た新規タンパク質を見出した。平成25年度は、スサビノリのLEA様タンパク質の探索をさらに進め、少なくとも2種の新規なLEA様タンパク質が存在することを見出した。また、スサビノリ70Sリボソーム画分のプロテオーム解析により、21種(S3, S4, S5, S7, S19, S20, L1, L2, L3, L4, L5, L6, L9, L13, L14, L16, L18, L27, L28, L31, L32)の大腸菌リボソームタンパク質のオーソログを同定した。これらの葉緑体リボソームタンパク質は、いずれも葉緑体ゲノムにコードされた遺伝子の産物であった。核ゲノムコードの葉緑体リボソームタンパク質は同定されなかったが、ドラフト配列のため(塩基配列データベースの部分的な情報欠落のため)MS/MSイオンサーチ法を適用できなかった可能性がある。また、同定された2種の新規LEA様タンパク質についても、MS/MSイオンサーチ法のみでは部分アミノ酸配列をコードするコンティグの特定にとどまった。従って、スサビノリ核ゲノムの塩基配列データベースの整備については今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要に述べたように、2種の新規LEA様タンパク質と大腸菌リボソームタンパク質にオーソロガスな21種の葉緑体リボソームタンパク質(S3, S4, S5, S7, S19, S20, L1, L2, L3, L4, L5, L6, L9, L13, L14, L16, L18, L27, L28, L31, L32)を同定できた。スサビノリの葉緑体翻訳因子EF-Tsが高等植物や緑藻の葉緑体EF-Tsとは構造的に異なり、バクテリアのEF-Tsに似ていることを平成24年度の実験において示唆していたが、葉緑体リボソームの構成タンパク質においてもバクテリアのものと構造的によく似ていることが示唆された。最終年度の実験計画に必要な、葉緑体リボソームのタンパク質組成と構造に関して、完全ではないものの重要な知見が得られた。一方で、2種の新規LEA様タンパク質の機能面の解析(乾燥変性保護作用等について)が遅れている。従って、やや遅れていると判断した。
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