本研究課題は、北海道から関東の太平洋近海で安定的に水揚げされる「サンマ」の加工残渣から得られるサンマ油の有効利用を目的に、サンマ油に特徴的に含まれるモノエン酸類のドコセン酸やイコセン酸等の高度精製技術の開発、さらに栄養学的意義を明らかにすることで、新たな栄養機能性脂肪酸の実用化・産業化を目指している。 最終年度は、昨年度に引き続き高度精製サンマ油(ドコセン酸+イコセン酸51%)の抗肥満作用を食餌誘導性肥満モデルであるC57BL/6Jマウスを用いて検討した。C57BL/6Jマウス雄、5週齢を2週間の馴化期間後、コントロール群(CT群)、高脂肪食群(HF群)、1%イコセン酸・ドコセン酸含有高脂肪食群(1%群)、5%イコセン酸・ドコセン酸含有高脂肪食群(5%群)の4群に分け、6週間飼育した。評価項目は摂食量や体重測定、各臓器や白色脂肪組織重量の測定、腹腔グルコース試験、各臓器の脂肪酸組成分析、総コレステロール(TC)、トリグリセリド(TG)濃度等の血液生化学的解析、ELISA法による血清中や膵臓中、精巣囲脂肪中のサイトカインの濃度測定、リアルタイムPCR法による脂質代謝に関連する遺伝子発現定量解析を行った。 結果として、昨年と同様イコセン酸、ドコセン酸が抗肥満作用を明確に確認するまでは至らなかったが、遺伝子発現定量解析で、1%群、5%群においてHF群と比較して、精巣囲脂肪中のPPARγ、SREBP-1c発現量の減少傾向が認められた。また、血清中、精巣囲脂肪タンパク質中のインスリン濃度も減少したことから、精巣囲脂肪中のPPARγが抑制されたことにより、脂肪細胞が小型化され、アディポネクチン産生が亢進し、インスリン感受性が改善されたこと、さらに、脂質合成転写因子であるSREBP-1cが抑制されたことにより、インスリン分泌障害の改善や糖や炭水化物の脂肪酸合成を抑制されたことが考えられた。
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