研究課題/領域番号 |
24580306
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
横山 芳博 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 教授 (90291814)
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研究分担者 |
細井 公富 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 講師 (70410967)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | コラーゲン / リジルヒドロキシラーゼ / 架橋 / 酸溶解性 |
研究概要 |
魚類コラーゲンは、哺乳動物のものと比較して酸に対する溶解性が極めて高く、化学的に不安定である。その原因の1つとして、分子間架橋の量や質が異なることが予想される。哺乳動物において、コラーゲン分子の架橋形成初期段階の反応を触媒すると考えられているリジルヒドロキシラーゼ (LH) には、3種類の分子種が確認されている。魚類のLHに関する知見はほとんどなかったが、本研究室におけるトラフグおよびコイのLH分子種発現解析の結果、LH2発現量の高低が、コラーゲンの不安定性に深く関わっている可能性が示された。魚種により、酸に対するコラーゲンの溶解性は大きく異なることから、本研究では、魚種の中ではコラーゲンの酸可溶性が極めて低いアナゴを用いて、LHのクローニングを試みた。 アナゴ普通筋から全RNAを抽出し、逆転写反応によりcDNAを得た。このアナゴ由来のcDNAを鋳型として、各LH分子種に対する縮重プライマーを用いたPCR反応により、cDNA断片を増幅し、pDriveベクターを用いてサブクローニングを行った。その後、ダイターミネーター法により、得たcDNAの部分塩基配列を決定し、BLAST検索に供した。 得られたcDNA断片の配列は、トラフグおよびゼブラフィッシュLH1に対する相同性が共に66.9%と高かった。一方、トラフグおよびゼブラフィッシュLH2、トラフグおよびゼブラフィッシュLH3に対する相同性は、それぞれ52.8、52.2、56.7および52.2%であった。以上より、アナゴから得られたcDNA断片は、LH1に相当するものであると考えられた。今後、さらにアナゴLH2および3の配列を得ると共に、各LH分子種のmRNA発現量を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リジルオキシターゼ(LH)は3つの分子種よりなるファミリー分子である。今年度は、魚類の中では筋肉由来コラーゲンの溶解性が最も低いものの一つであるアナゴからLH分子種のcDNAクローニングを試みた。予定通り、LHファミリー分子の一つであるLH1のcDNAクローニングに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度までの研究によって、魚類の中で筋肉由来コラーゲンの酸溶解性が最も低いアナゴからLH1 cDNAのクローニングに成功した。今後はさらに他のファミリー分子を得る必要がある。LH2は、コラーゲンのNまたはC末端のテロペプチド領域においてリジン残基の水酸化に関与するのではないかと予想される。一方、LH3に関してはその機能は今回目的とするコラーゲンの酸溶解性に影響する架橋形成反応とは直接関係がないことが予想される。そこで今後は、特にLH2分子のcDNAクローニングに注力する必要がある。 また、魚類の中でも筋肉由来コラーゲンの酸溶解性が比較的高いコイやヒラメなどについてもLHファミリー分子のcDNAを得る必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
各魚種よりリジルヒドロキシラーゼ各分子種(アナゴLH2 cDNA、コイLH1およびLH2 cDNA、ヒラメlH1およびLH2)のcDNAクローニング費用として用いる。具具体的には、それら各魚種の筋肉由来総RNAの抽出および精製、RACE Ready cDNAライブリーの作製、プライマーの合成などを行う。 また、各遺伝子の発現解析も行う。具体的には、各魚種および各遺伝子特異的なDNAプライマーの合成、ノザンブロッティングまたはRT-PCR法によるmRNAレベルでの発現解析を行う。 なお、平成24年度の29,078円については、cDNAクローニングに用いるDNAプライマー合成に使用する予定である。
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