研究課題/領域番号 |
24580310
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中谷 朋昭 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (60280864)
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キーワード | 食に関する事件・事故 / 株価変動 / 確率過程 / ジャンプ検定 / 商品先物市場 |
研究概要 |
本研究の目的は、食品に関する事件・事故の発生に際して、当該企業をはじめとする食品関連企業の株価変動の解析を通じて、株式市場の反応を国際比較の視点から明らかにしようとするものである。 助成2年目にあたる本年度は、助成初年度における研究を発展させ、以下の点に関する研究を行った。(1)日本の外食産業に属する上場企業を対象として、統計的仮説検定による急激な株価変動(ジャンプ)の析出とその要因分析、(2)株式市場と対比する目的で、日本におけるコメ先物価格のジャンプ状の価格変動に関する統計解析を行い、どのようなタイミングで価格のジャンプが発生し易いのかを明らかにした、(3)同様に、国際商品であるトウモロコシの先物価格について、日本の先物市場を対象に、ジャンプ状の価格変動に関する統計解析を行った、(4)本研究において必要とされる統計的解析手法を実行するために、コンピュータプログラムの作成とバージョンアップを継続的に実施した。 分析の結果、(1)については、食品関連企業の株価は、食中毒事件やBSE発生などの食品安全性に関する情報よりも、企業業績に直接関わる情報により強く反応すること、(2)については、現物市場における需給動向とは無関係に先物価格が変動しているとはいえないこと、株式市場と比較して市場流動性が低いためにジャンプ状の価格変動が発生しやすいこと、(3)については、ジャンプ状の価格変動は、ほとんどが原産地である米国の受給情勢や、国際取引の中心であるシカゴ市場における価格変動に起因するものであって、日本国内の要因に基づくジャンプ状の価格変動はほとんど認められなかった、などの点を明らかにした。(4)については、これまでのプログラムのバグを修正するとともに、新たな分析モデルの追加などを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、本年度に少なくともひとつの海外地域における株価データの整理を完了する予定であったが、データ提供元における事務手続きの遅延のために、この作業を本年度中に完了することはできなかった。この点で多少の遅れは認められるものの、本年度末にはデータの入手は完了しており、既存のコンピュータプログラムによって分析に供するデータ整理は遅滞なく処理できる見込みであることから、研究計画からの重大な逸脱とは考えられない。 一方、研究開始2年度目までに、研究論文3篇、学会・研究会等での報告8回(初年度2回、本年度6回)という成果を公表しており、当初の研究の目的と比して十分なものであると考える。 以上のことから、標記区分の達成度と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、研究計画の最終年度に当たるため、未達成部分の遂行を目指すとともに、全体の取りまとめを中心とした研究を予定している。具体的には、香港株式市場のデータ整理を完了し、中国における食品関連の事件・事故と株価変動の態様についての分析を完了させる予定である。 このほか、本研究助成および過去6年間にわたる食品関連企業の株価分析について総括的な取りまとめを行い、今後同様の研究を行おうとする研究者に対して、手軽に参照できる文献の提供を目指すこととする。 上記作業において、本研究の到達点が明らかになると期待されることから、これを踏まえて、食品関連企業の株価分析という研究領域において、今後さらに必要とされる諸点を整理する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた主な理由としては、以下の2点があげられる。第一に、海外データの購入費用が、為替レートの変動などの理由により、想定よりも安価となったことである。第二に、参加を予定していた海外学会への参加ができなかったためである。 本年度末の時点で、次年度にはすでに2カ所の海外学会(米国およびイタリア)への参加が見込まれているので、これに関する出張旅費および学会参加費などに次年度使用額を充当する予定である。このほか、翌年度分として請求している助成金については、当初計画通り、株価データの追加購入費、論文投稿費などに充てる予定である。
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