研究課題/領域番号 |
24580312
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
泉谷 眞実 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (60265064)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バイオマス |
研究概要 |
本研究の目的は、現行のバイオマス活用促進対策が多くの問題をはらんでいるとの基本認識から,その活用を拡大するための新しい活用推進モデルを構築することにある。具体的には、バイオマス利活用における「リサイクル・チャネル問題」と「活用促進対策問題」の2つの問題に焦点を当て、その課題解決のために、①リサイクルチャネルの広域化の実態と地域内チャネル構築のための諸条件の解明、需給調整プロセスの類型的把握、②バイオマスの「需要発見プロセス」の解明、③既存の活用促進対策(「システムトップダウン型活用促進モデル」)の問題点の解明と「地域ボトムアップ型活用推進モデル」の構築を図る。第1年度である平成24年度は、「リサイクルチャネル問題」について主として検討を行った。具体的には、イネバイオマスを主たる対象としたが、青森県が行っている稲わらのマッチング事業に関する機関調査、米ぬかを対象とした精米業者等の事業所調査、籾殻を対象としたライスセンターのアンケート調査、籾殻固形燃料の製造業者の事業所調査、籾殻固形燃料ユーザーのアンケート調査、バイオ燃料用の廃食油の収集に関する事業所調査等を行った。それらを通じて、いずれの品目でもリサイクル・チャネルの広域化が進展しており、さらに一部の品目では「地域間での需給不整合問題」まで進展していることが明らかになった。また、「需給調整プロセス」の析出と類型化を行ったが、これまでも対象としてきたりんごジュース製造副産物と、今回新たに調査を行った米ぬか、籾殻、廃食油を比較すると、需給調整の主体が品目によって異なっている事実が確認された。また、「市場化」が進展している品目ほど、その分担が明確になっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、(1)「需給調整プロセス」の類型化とそのパターンの解明と(2)「広域チャネル形成」の実態と「地域内チャネル形成」の条件の解明を行う計画であった。需給調整プロセスに関しては、当初計画のりんごジュース製造副産物に加えて、米ぬか、籾殻、廃食油の調査も実施し、比較分析を行うことが可能になった。また、チャネル問題では、当初計画の稲わらに加え、(1)と同様に、米ぬか、籾殻、廃食油の調査も実施し、広域化の実態について複数の事例からの解明が可能となった。しかし、地域内チャネル形成の条件の解明までは到達できなかったため、この点は次年度以降の課題としたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画であるが、まず、バイオマス利活用における「需要発見プロセス」のモデル化を行う。この点に関しては最も基本的なリサイクル方法である「堆肥化・肥料化」を対象とする。そして、既存のバイオマス事業者が自社の製品である堆肥の販売先をいかに探し出したのかを事例調査から類型化する。堆肥化・肥料化を特に取り上げるのは、技術が飼料化よりも比較的確立しており、事例も多く、大量の利用が見込めるのみならず、飼料化においても堆肥化が前述の需給調整プロセスのために不可欠だからである。次に、「需要発見プロセス」の実態調査を行った結果から,そのモデル化を行う。 また、バイオマスタウンの分析から「システムトップダウン型モデル」の実態と課題を探る。もう一つの大きな柱である「活用促進対策問題」に関しては、バイオマスタウン構想策定市町村を主要な対象として研究を行う。まず、既存のバイオマスタウン構想計画書の収集・解析を通じて、事業推進における「システム・トップダウン度」の計測・評価を行う。また、解析に際しては、対象の類型化を行うが、類型化は、従来の技術的視点からの物の種類別(例えば、木質バイオマス、食品残さ、家畜排せつ物等)ではなく、あくまでも推進体制からの類型化を行う。次に、全国からいくつかのバイオマスタウンを抽出し機関調査を行う。そして,バイオマスタウン構想策定自治体約300カ所に対するアンケート調査を行い、現状のバイオマス活用促進対策の問題点を析出する。 以上のような「システム・トップダウン型推進モデル」の問題点の把握と、リサイクル・チャネル対応の実態を踏まえて、「地域ボトムアップ型推進モデル」の構築をはかる。そこでの分析枠組みは、従来型の「システム・トップダウン型」のバイオマス活用促進モデルと、望ましいモデルとしての「地域ボトムアップ型」の推進モデルの対比という形で行う計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、文献資料の発注が遅れ、次年度に使用の研究費が2万7318円あるが、これは次年度の文献資料の入手に用いる計画である。
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