研究課題/領域番号 |
24580314
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
栗原 伸一 千葉大学, 園芸学研究科, 准教授 (80292671)
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キーワード | 原発事故 / 風評被害 / 食品安全性 / 消費者意識 / フードシステム |
研究概要 |
研究2年目となる本年(平成25年)度は,昨年(平成24年)度に引き続き,福島県産農産物に対する消費者の購買行動について,会場実験(於松戸市)を実施することで観察した(ただし,もう一つの科研費研究(課題番号:24310134)との共同調査)。そして,本年度の会場実験の結果を昨年度の会場実験(於東久留米市)や郵送調査(福島,大阪)の結果と比較することで,消費者意識の地域差を計量的に検証した。その結果,1)福島に近い地域に住んでいる消費者の方が検査情報に反応しやすいことや,2)検査情報を実際に確認する消費者は少ないものの,公開すること自体が信頼に結びつくこと,3)買い物時間が短く所得の低い消費者は,福島産を回避する傾向にあること,4)福島の消費者は大阪に比べて食品の放射能汚染に対する懸念が強く,東京の消費者とともに産地意識が高いこと,5)放射能に関する知識の正確さは,福島から遠ざかるに従って低下すること,6)福島産を回避する傾向が最も強いのは大阪で,福島では積極的に購入する傾向にあること,7)福島産であっても安ければ購入する消費者が何れの地域でも多く,2~3.5割程度の値引きを希望していること,8)農家参加型の検査情報即時公開システムに対する評価は福島で高く大阪で低いこと,9)福島産を回避する要因として小世帯,多子,スーパー利用など家計要素の影響が強いこと,そして10)福島産を積極的に購入する消費者は農家への補償や検査費用について消費者も支援するべきだと考えていることなどが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,タイトルにもあるように,生産者から消費者までの,いわゆるフードシステム全体からのアプローチを目指しているが,現在のところ消費者サイドからの検証にとどまっている。しかし,福島県産農産物の風評被害の主な発生原因は消費者にあることは明らかであるため,研究目的自体は概ね順調に達成されていると評価できよう。なお,生産者に対しての調査についても,すでに自治体やJAを通じて調査票の配付は終了しており,現在,再々催促を行い,待機中であることを申し添えておく。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は研究計画の最終年度であるため,これまで蓄積してきたデータの解析と,とりまとめを行い,学会活動(研究報告,論文投稿)を通じて,本研究の成果を今年度中に公表する予定である。同時に,引き続き,生産者や小売店などに対する調査も実施し,フードシステム全体からのアプローチを達成したいと考えている。具体的な例としては,福島県産の花き(トルコキキョウ)に対する意識調査を東京都内の小売店(花屋)に対して実施し,風評被害の発生メカニズムをより詳細に解明する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
生産者(農家)に配付しておいた調査票の回収,および小売店への調査票の配付が予定よりも遅れて実施できなかった。 生産者から回収したデータを計量分析するためのソフトウェア購入と,調査票の配付(送料)に使用する予定である。
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