最終年度となる平成26年度は、福島県産花きの風評被害について新たに調査するとともに、研究期間に実施した複数の調査を総括した。 もともと本研究の副題では「フードシステム」という言葉を用いていたが、調査を進めるなかで、食用でない農産物(具体的には観賞用の花き)の風評被害も無視できない状況にある事実が浮かび上がってきた。そこで、最終年度ではあるものの、急遽、東京都の消費者(N=670)および生花店(N=240)に対して、福島県産花きの意識調査を9月に実施した。その結果、食用農産物の買い控え率(67%)に比べれば低いものの、非食用(観賞用花き)であっても買い控えをする消費者が相当数(56%)存在することが確認された。また、用途によって、その程度には差があり、なかでも自宅用の買い控え率(45%)が高いことがわかった。ただし、放射能検査や生産履歴に関する情報を提供することで(買い控えると回答した)半数以上が購買意欲を示すことも明らかとなり、今後の福島県産花きのマーケティングに資する知見を得ることができたといえる。一方、生花店への調査からは、現在、福島県産花きを扱っていない店舗は27%で、その理由が放射能であるとしたのは(扱わない店舗の)15%であることが判明した。ただし、そもそも産地表示をしている店舗自体が少ない(17%)ため、福島県産花きの風評被害はまだ社会的に表面化していない事実がうかがえた。 なお、本研究期間を通じて、2つの仮説店舗型会場実験(東久留米市、松戸市)と3つの郵送調査(福島、東京、大阪)を実施した。これらを総括した結果、福島県に近いほど放射能検査の情報効果が強く出現するなど、地域特性に関する知見を新たに得ることができた。これら期間内に取り組んだ調査のメタ分析についての論文は『フードシステム研究』に投稿され、21巻3号に掲載された。
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