研究課題/領域番号 |
24580315
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
吉田 義明 千葉大学, 園芸学研究科, 准教授 (80210730)
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キーワード | 植物知的財産権 / 育種技術 / 国際情報交換 |
研究概要 |
本研究の主要な課題は、1.新たなバイオテクノロジーによって開発された植物品種の経済的価値が、途上国における園芸生産と市場の発展によって飛躍的に大きくなってきていること。2.それにともなって、品種開発において基幹的な地位を占めつつある遺伝子工学的技術の知財保護の経済的意義が高まっていること、を明らかにすることである。 本年度は4月に脱稿した「論点をめぐって~バイオテクノロジーと植物知的財産権についての農業経済学的検討」で主に第1の課題について(なお本稿は7月に『歴史と経済』220号に掲載された)、また第2の課題については、主に「育種技術の発展と植物知的財産権の変容(論文審査中)」において検討し、研究の一定の前進をなしえたと思う。 しかしこれらの論考において、研究到達点を確認しつつ、当面の課題を明らかにしたことにより。この分野における途上国に特有の問題を再認識することとなった。とくに在来種の遺伝資源を保存することに関して、誰のコストでそれが行われるべきなのか、また短期的にそれが誰を利することになるのか、といった現実的な問題が浮上してきた。この点について、2回にわたり国際情報交換として、マレーシア農業省の担当者・研究者と報告に基づき討議を行ったが、この分野における途上国、先進国間の利害対立と並行して、必ずしも国単位には把握できない、バイオメジャー、中小の育種業者、零細農民、大規模農業者の複雑な利害対立が存在していることが明らかになってきた。今後、この点を学術的な課題として明確に提示することが重要な研究目標となるように思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
問題点として、結果的に知的財産保護に関する分析を途上国からの視点にやや偏って行うことになって、米国調査の実施を躊躇していること。植物知的財産権について最も大きな発言力をもつ国の現状分析が遅れていること。しかしながら、当初の計画どおりとは言えないものの、中国、東南アジアに関する研究成果が想定以上に得られているので、米国に関しては、この研究とは別途、計画することもやむを得ないように考えている。 また中国調査を先延ばししてしまったが、これは4月に実施できることになったので、さほど問題とはならないと思われる。 以上、計画よりも進展している課題と、進捗していない課題とを総合的にみると、おおむね順調という評価が適切なように考える。
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今後の研究の推進方策 |
1.4月中に、中国における国際蔬菜種苗科技博覧会の視察を実施し、先進国種苗会社が世界の半分を占める市場に対して、どのような戦略をもって臨んでいるのかを確認する。 2.機会を捉えて、アフリカ連合の知財戦略を主要メンバーとディスカッションすることを計画している。これによって、国ベースの矛盾について総括する手がかりとしたい。 3.国内の中小種苗会社、ブリーダー、中核的園芸経営について、国ベースではない利害について、次のテーマ設定のための聞き取り調査を実施したい。 4.できれば、ここ10年のこの分野の研究とりまとめを行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
中国調査を4月に実施することにしたため予算を繰り越した。4月20日より中国国際蔬菜種苗科技博覧会が開催されるが、これを視察することが研究上、重要であると判断した。したがって予定していた中国における種苗流通調査及び資料収集実施をその時期に合わせて実施するために、日程を延期した。 前年度繰越額、約45万円については4月実施の中国調査旅費、コーディネーター及び通訳への謝金及び交通費、統計資料代に充てる予定である。また26年度予算については、東南アジア旅費(マレーシア、タイ、シンガポールを予定)、国内旅費(広島、仙台を予定)、英文論文校正料、中国語資料翻訳謝金に充てる予定である。
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