本研究の目的は、流域圏内の環境再生活動と地域経済の関係を異業種によるネットワークの態様から明らかにすることである。 研究の方法としては次の①から③とする。①河川流域を巡る自然と地域の農林漁業等の産業間の利害関係を経過から再整理すること、②環境再生活動の実態調査を通して異業種のネットワークへの参加の論理を明確にすること。③環境再生活動が地域経済の再生に繋がるとしたらどのような論理が考えられるか、である。 本年は③に重点を置いて調査対象の分析を行った。次のような論点を導いた。 農林漁業は、市場部門の取引を通し、収益がでることで産業として維持される。収益性が落ちると衰退するし、消滅することもある。しかし、市場部門だけが農林漁業を産業として維持させるものではない。圃場、林野、漁場などの非市場部門が劣化すれば農林漁業と市場部門との関係も成り立たなくなるからである。しかも、圃場、林野、漁場は、たとえば林野が荒れると、圃場にも、漁場にも負の影響が及ぶという関係にある。それゆえ、非市場部門にある圃場、林野、漁場をつなぐ関係を再生することが、流域圏の地域経済の再生に必要条件となる。 異業種ネットワークによる環境再生活動は、さまざまな開発によって対立関係となった人間関係を交流と協働によって調和・共生へと導く可能性をもっている。まさに圃場、林野、漁場の関係を改善する非市場部門の要であり、市場部門を支える要ともなる。痛んだ非市場部門をどう健全化させるかが、市場部門の在り方、農山漁村の地域経済の在り方を決めるということになる。
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