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2012 年度 実施状況報告書

震災後の水産業復興政策の経済分析

研究課題

研究課題/領域番号 24580317
研究種目

基盤研究(C)

研究機関政策研究大学院大学

研究代表者

小松 正之  政策研究大学院大学, 政策研究科, 客員教授 (70537133)

研究分担者 細江 宣裕  政策研究大学院大学, 政策研究科, 准教授 (60313483)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード水産業 / 東日本大震災 / 漁業権
研究概要

岩手県、宮城県と福島県を中心とする東日本の水産業は大震災で3百の漁港、2万隻の漁船、定置網、養殖施設と水産加工施設などのほぼ全てを失った。震災後2年を経過したが本格的な復旧・復興はまでは遠い。養殖業の再開もまだ本格化していない。産業の振興と雇用の創設に貢献する水産加工業はほとんど復旧していない。放射性物質の海洋流出で、一時全面的に停止した福島県沖の漁業も一部魚種で試験操業を開始したが、主要魚種については目処が立っていない。
震災の直後から約2年間、漁業者と行政機関との会合等を行って、以下のような問題点に関する知見を得た。
1. 「水産業の新生」が求められるものの、将来の産業・雇用政策がない。補助金の使用の方法論のグループ補助金と公共事業に集中していること。2.長期ビジョンの策定(たとえば、先進的な産業地域として指定)が必要であるが、市町村、商工会議所と漁業協同組合には処理能力が欠如し、政府予算も、復旧が目的となっている。3. 漁業部門は、漁船の購入や瓦礫処理などに終止し、海や資源回復の対策がない。しかし、石巻市桃浦で、漁業者と水産卸売会社が共同出資する漁業合同会社(LLC)が漁業権の取得を目指し設立された。宮城県も漁協以外に漁業権を付与する予定である。漁業権の再編と近代化が震災を契機にようやく進み始めた。4.岩手県では漁民組合を組織し、漁協改革が検討され、ITQを取得し、新漁業を確立する動きが始まった。しかしITQの本格的導入は新潟県の佐渡でホッコクアカエビを対象としたIQモデル事業が開始されたことの意義が大きい。IQは世界では水産業の再興の切り札であるが日本ではまだ本格導入はされず、上記の新潟が最初である。これを宮城や岩手の漁業に導入すること、日本各地の先例・モデルとすることが急がれるが、そのための実証例を東北地方でも早急に導入すべきである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

漁業権問題に関する研究成果を当初考えていたよりも早い段階で英文書籍として刊行することができたため。その他の課題、すなわち、制度的な分析視点からの水産業復興政策に関する分析と提言も、業績リストに示すとおりに順調に進展している。

今後の研究の推進方策

平成24年度までの実績を踏まえつつ、どのような漁獲高と市場価格が成立し、次期(以降)に残される資源がどの程度になるのかは、現実のデータを用いてさらに検討する必要がある。そこで、前年度になされた調査の結果をふまえて一定の理論的枠組みを構築した上で、望ましい漁獲管理システムのあり方に基づいて分析する。そこでは主に、個別の魚種・漁場についての数量割り当て(IQ)制度を取った場合と、その割り当てを譲渡可能な形にした(ITQ)制度との間で、漁獲管理の実効性と実際上の運用可能性について考える。現実に、小松・勝川・濱田ほかがまとめたように、新潟県や福岡県ではこれらの制度を導入しようとしているので、実験的なデータを採取することができる。これまでのような逸話的な事例に基づくことではなく、データという明確な証拠に基づいた厳密な分析は、この分野の研究を大きく進歩させる。
また、漁獲量の決定メカニズムを分析することによって、実際のデータを取得したときに用いられていた制度(ITQ 制度)以外に、仮想的に異なる制度が用いられたとして、どのような漁獲・価格・資源量が得られるかをシミュレートすることが出来る。本研究の成果は、こうしたところにまで発展可能なものである。
これは一種のFishery Game を解くことになるが、その際には数値計算手法が有効であろう。推定をする際には前提する理論モデルに関して、簡単化のためにいくつか強い仮定を置く必要があるが、これがしばしば非現実的なものである。数値計算による接近でこの仮定を緩めたり、事後的に仮定の妥当性を検証したりすることが有益であろう。

次年度の研究費の使用計画

まずアメリカに出張し、米政府大気海洋庁等を訪問し、ITQ管理の実態調査と意見交換などを行う。こうした実態調査と、東北地方の被災地の現地調査を継続して行い、実効性のある政策提言に結びつけていきたい。数値計算手法の開発については、引き続き契約理論に関する数値分析を行うことで、手法上の困難な点と、その利用における有用性を明らかにしていきたい。そのための研究打ち合わせを旅費を中心に研究費を使用する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 契約理論分析における数値計算アプローチ : モラル・ハザードの場合2013

    • 著者名/発表者名
      橋本日出男, 濱田弘潤, 細江宣裕
    • 雑誌名

      新潟大学経済論集

      巻: 94号 ページ: 99-135

  • [雑誌論文] 契約理論分析における数値計算アプローチ: モラル・ハザードの場合2012

    • 著者名/発表者名
      橋本日出男, 濱田弘潤, 細江宣裕
    • 雑誌名

      GRIPSディスカッションペーパー

      巻: 12-03 ページ: 1-40

  • [雑誌論文] International Trade and Management of Shared Renewable Resource2012

    • 著者名/発表者名
      寳多康弘、小川健、董維佳
    • 雑誌名

      南山大学経済学会ディスカッションペーパー

      巻: No.48 ページ: 1-33

  • [雑誌論文] Regional Agreements on Standards: Multilateralism versus Regionalism2012

    • 著者名/発表者名
      寳多康弘、川端 康
    • 雑誌名

      名古屋市立大学経済学会ディスカッションペーパー

      巻: No.563 ページ: 1-22

  • [雑誌論文] Is the restoration fo Japan's Fisheries Possoble?2012

    • 著者名/発表者名
      Masayuki Komatsu
    • 雑誌名

      International Conference Proceeding on Inclusive Innovation and Innovative Management

      巻: 1 ページ: 182-189

    • 査読あり
  • [学会発表] International Trade and Management of Shared Renewable Resource

    • 著者名/発表者名
      寳多康弘
    • 学会等名
      The 9th World Congress of Regional Science Association International, RSAI 2012
    • 発表場所
      the West University of Timisoara, Romania
  • [学会発表] International Trade and Management of Shared Renewable Resource

    • 著者名/発表者名
      寳多康弘
    • 学会等名
      The 52th Congress of the European Regional Science Association, ERSA 2012
    • 発表場所
      the University of Economics in Bratislava, Slovakia
  • [学会発表] Is the restoration fo Japan's Fisheries Possoble?

    • 著者名/発表者名
      Masayuki Komatsu
    • 学会等名
      International Conference on Inclusive Innovation and Innovative Management
    • 発表場所
      Bangkok, Thailand
  • [図書] The Japan Times2012

    • 著者名/発表者名
      Masayuki Komatsu
    • 総ページ数
      131
    • 出版者
      Who Owns the Sea?

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公開日: 2014-07-24  

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