研究課題/領域番号 |
24580318
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
荒幡 克己 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (90293547)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際研究者交流、アメリカ / 米生産調整 / 直接支払い / 補助金の受益と帰着 / デカップリング |
研究概要 |
本研究における課題への接近は、第一に「理論シミュレーション分析系」、第二に「統計データ実証計測系」、第三に「現地取引慣行調査系」に大別される。本年度、研究代表者は、アメリカイリノイ大学に留学し、その統計分析の世界的な第一人者であるBarrett Kirwan氏との共同研究を進めることができた。このため、研究の進め方は、当初の予定のように三つのそれぞれの領域を同時並行的に進めるのではなく、主として第二の統計データ実証計測系に力を入れて進めた。 「統計データ実証計測系」: 農業政策の受益の生産要素への「後方転嫁」とその「帰着」については、Kirwanは、アメリカ農務省のパネルデータを用いて、計量経済学モデルにより、Gardnerのような複雑な数式モデルを使わずに、直接計測する方法に成功した。このKirwan論文は、まだ日本では注目されていないが、Journal of Political economyに掲載されたことからもわかるように、一般経済学として見ても画期的成果である。そこで、このKirwanモデルを日本にも適用するのが、本研究の最大の眼目である。 研究代表者は、2012年7月から渡米し、イリノイ大学にて、Kirwan氏と三年間の研究全体の進めた等につき、連日入念な打ち合わせを行った。また、滞在機会を利用して、補助金受益に関する学術論文とともに、その政策の政治過程を裏付けるアメリカ議会資料等の渉猟も行った。 Kirwanのモデルは後方転嫁、とりわけ地代への農業政策の影響を狙いとして構築されたものであり、日本における分析でも、後方転嫁ではほとんどそのまま適用できる。一方、前方転嫁については、Kirwanモデルを基にしつつも、何らかのアレンジを行い、日本の前方転嫁にも適用可能なモデルを独自に策定することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
統計データの分析に関しては、その手法について、中心となるパネル分析のデータベースの構築方法から分析解析手法に至るまで共同研究者のイリノイ大学Barrett Kirwan氏と綿密な打ち合わせができので、今後は、その成果を生かして、順調に作業が進められるようになった。データ収集に関しては、当初の二、三ヶ月で農林水産省統計部から統計法33条に基づく個別調査票の提供が受けられる予定であったが、個人情報保護の観点以前からよりも手続きが厳格化し、やや時間を要したところは、やや計画遅延になった。しかし、11月以降、データ入手後のデータ分析作業でやや遅れを挽回している。それ以外の作業は、やや後回しとなっているが、今後これらにも順次着手していく予定であり、今のところ全体の進捗度合いとして見れば、大幅な遅れとはなっていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、補助金受益と帰着の解明に関しては、特にその後方転嫁、即ち補助金と地代の関係が重要である。このため、全国農業会議所に依頼して、各都道府県の農業会議事務局、各市町村の農業委員会等を訪問して、地域の小作料の実態について、データを収集するとともに、その動向につき聞き取り調査を実施し、実態を踏まえた統計的分析をおこなっていく予定である。 一方、補助金の前方転嫁については、統計データが卸、小売、というように段階別に詳細に存在するとは限らないため、これを補完する意味で、理論的なシミュレーションも重要である。このため、弾力性を設定した理論計算を複数実施してその感度分析をおこなっていく、という手法も有効であり、こうした方向も重視して分析を進めていくこととする。
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次年度の研究費の使用計画 |
統計データの分析加工が、次年度研究費使用の中心となる。全体の約1/2(60万円程度)は、これに用いる予定である。一方、前述の都道府県農業会議、各市町村農業委員会の全国訪問調査を行うため、国内旅費に50万円程度が必要となる。更に、アメリカイリノイ大学Barrett Kirwan氏との打ち合わせ、アメリカ農業経済学会年次大会における研究動向の把握等のためりの渡航で外国旅費が30万円程度の使用を予定している。その他、諸経費で10万円程度を予定している。
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