研究課題/領域番号 |
24580318
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
荒幡 克己 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (90293547)
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キーワード | 直接支払 / 補助金 / 米生産調整 / 転嫁と帰着 |
研究概要 |
統計データ(農業経営調査)の個票を統計法第33条に基づき農林水産省から入手し、過去十年分の数値を基に計量分析を進めた。パネルデータとして、個人データを一年ごとに接続していく作業に相当な時間を費やした。分析の結果、一応の結果が得られたものの、事前の統計バイアス(ヘックマンバイアス)除去のための前処理が不十分であったこと、操作変数法による前処理を行う方が適切であったが、それを省略していたこと等により、必ずしも妥当な結果とは言いがたいものであった。また、データが平成22年までのものであったため、その後の戸別所得補償制度が本格的に適用された状態での助成金の帰着の結果がどうなったか、という最大の課題については、不十分なものであった。 このため、再度、農林水産省に統計データ提供の申請を行い、最新データを整えた上で、改めて再計算の作業を進めることとした。 現地取引慣行調査に関しては、数県への調査を実施し、凡その傾向は掴むことができた。特に、愛知県のように、農地流動化が進み、大規模層により借地が進展している地域では、形式的には戸別所得補償の助成の大部分を借地者側が受けているケースが明らかとなった。この場合は、典型的に大量に、一旦は助成金を耕作者が受け取り、それが転嫁のメカニズムに従い、地主に帰着していく実態が生じており、本研究で対象としている事態が広範に生じていることがわかった。今後は、こうした県、地域に焦点を当てて、最終年の研究を進めていくこととする。 なお、理論研究については、海外文献を205点収集し、またその範囲を直接支払のみならず、保険的な支払等も含めて対象とし、広範な分析結果と理論的考察をレビューした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
統計分析については、一通り分析作業を進め、結果が得られたものの、再度最新データを追加して再計算することとなったが、これは、予想されたことであった。一通り計算を進めたことにより、共同研究相手のイリノイ大学Kirwan氏に相談することができ、操作変数法の重要性とその実施による誤差の是正の意義等について、指導を受けることができた。これによって、問題の所在もはっきりした。また、平成22年までのデータでは、やや過小な数値となる予想も、おおむね妥当であった。これらを踏まえて、最終年には、最適な手法と最新のデータにより、妥当な計算結果が得られるように努めていきたい。 現地慣行調査では、予想以上の成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
統計分析に関しては、最終年は、データを平成24年までのものに更新し、操作変数法等の前処理を施して再計算を行う。現地慣行調査では、愛知県の市町村レベル調査を行うとともに、重点的に新潟県、茨城県、兵庫県、熊本県等での調査を進めていくこととする。理論分析では、アメリカ以外にも、EUを対象とした文献に重点を置いて収集し、分析していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究は、計画通り順調に進行しているが、旅費の執行等で端数が生じたものである。 次年度計画に従い、有効に使用していく予定である。
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