研究課題/領域番号 |
24580323
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
赤沢 克洋 島根大学, 生物資源科学部, 准教授 (70304037)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 地域マーケティング / 観光 / ソーシャル・キャピタル |
研究概要 |
本研究の目標は,地域マーケティングにおけるソーシャル・キャピタルに着目し,①地域住民間及び都市住民と地域住民間のソーシャル・キャピタルの形成,②地域住民のマーケティング力や都市住民の需要行動に及ぼすソーシャル・キャピタルの効果を行動科学的方法論に基づいて定量的に検証することである. 当該年度の目標は,中長期的な観光資源に対する地域マーケティングを取り上げ,そこでのソーシャル・キャピタルの効果を分析することであった.これに対して,以下の2つの取り組みを行った. 第1に,工場見学の地域観光資源としての特質に焦点をあてた研究である.具体的には,工場見学を実施している全国856カ所の工場・企業に対するアンケート調査を行い,まず,SEMにより集客力と企業・工場との内部条件を構造モデル化した.次いで, CHAIDにより集客力と工場見学実施目的との関係から6つの類型を抽出した.最後に,構造モデルを援用しながら,類型毎に集客力のメカニズムを明らかにした.ただし,ソーシャル・キャピタルの効果は明確には出なかったため,最終結果に取り入れることはできなかった. 第2に,歴史的街並み観光地の魅力に焦点をあてた研究である.具体的には,観光地の魅力としてソーシャル・キャピタルを含む観光地の魅力(21変数)に関するアンケート調査(調査対象地:倉敷美観地区,高山)を実施した.その結果,観光地のソーシャル・キャピタルが観光地を訪問する動機として認められるものの,その程度は顕著でないことがわかった.さらに,潜在クラス分析により,魅力を重視する傾向により観光客を類型化したところ,倉敷美観地区で4つ,高山で3つの類型が得られた.しかし,観光地のソーシャル・キャピタルは類型の決定要因としての顕著な働きが認められなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の通り,2つの研究により,中長期的な観光資源におけるソーシャル・キャピタルの効果を分析するという目標は達成できた.しかし,明確な効果が認められなかった.これは,インタビュー形式での調査及びテキストマイニング手法での解析とより顕著な反応を見せると考えられるリピーターに焦点をあてた調査が不足していたためと考えられる.以上のように,見通しの甘さから十分な結果が得られていないものの,取り組みは当初の計画通りであり,今後の方向性を確認することができたので,概ね順調に進展していると達成度を評価した.
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今後の研究の推進方策 |
当面の推進方策は次の3つである.第1に,観光地へのリピート要因の中で,特に心理的なものを取り上げ,その効果を定量的に検証することにより,ソーシャル・キャピタルの形成と地域マーケティングにおける効果を明らかにしていく.具体的には,温泉地におけるファンやなじみといった旅行者を抽出し,その特性と意識を分析していく.第2に,イベントのような短期観光資源に対する調査研究を行う.具体的には,地域住民間のソーシャル・キャピタルの形成と効果に焦点をあてるが,時系列的変化と正負両面性に言及する.これらに対しては,インタビュー形式の調査と質問紙形式のアンケート調査を併用する予定である.第3に,ソーシャル・キャピタルの中でも郷土愛に焦点をあて,その他のソーシャル・キャピタル変数や諸条件との関連性を定量的に明らかにする.
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度の研究費は概ね有効に使用したが,いくつかの経費を節約することができた.これを含めた研究費の使用計画は次の通りである. 年間を通じて,アンケート調査関連(調査旅費,調査補助謝金,消耗品一式)に約18万円を支出する.また,データ解析用PC,システム解析ソフトに約40万円を支出する.成果報告関連(学会参加旅費,学会誌投稿料)に約20万円を支出する.ソーシャル・キャピタル関連図書の購入に5万円を支出する.以上を合わせて,約82万円の使用を計画している.
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