研究課題/領域番号 |
24580323
|
研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
赤沢 克洋 島根大学, 生物資源科学部, 准教授 (70304037)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 地域マーケティング / 観光 / ソーシャルキャピタル / 地域農産物 |
研究実績の概要 |
本研究の目標は,地域マーケティングにおけるソーシャル・キャピタルに着目し,①地域住民間及び都市住民と地域住民間のソーシャル・キャピタルの形成,②地域住民のマーケティング力や都市住民の需要行動に及ぼすソーシャル・キャピタルの効果を行動科学的方法論に基づいて定量的に検証することである.この目標のために,当該年度は,以下の取り組みを行った. 山陰海岸ジオパークは官民参加による組織運営がなされ,その具体的活動は多岐にわたる.活動間には関連性と波及性が存在し,そのため活動全体がシステムとなっている.したがって,山陰海岸ジオパーク活動の効率的なマネジメントのためには,活動システムのメカニズムを解明する必要がある.そこで,システム内で活発に働く活動を特定すること,システムの骨格を同定することの2点を目的とした.このために,組織運営に加わる41団体を回答主体としたアンケート調査を実施し,グラフ理論に基づいたDEMATELを用いて,システムの簡易な構造解析を行った. その結果,他の活動との影響・被影響の関係を中心的に持つ活動として,魅力創出,観光振興,人づくりが特定できた.また,提案手法により,観光振興に関する部分システムと意識醸成に関する部分システムとが魅力創出を核として結合したシステムが骨格構造となっていることを明らかにできた.さらに,活動システムの構成要素に無駄が少ないこと,骨格構造が効率的な構造であることから,山陰海岸ジオパークの活動システムがミニマムエッセンシャルズの点から妥当な構造であることがわかった. 以上から,地域マーケティングの一事例である山陰海岸ジオパークの取り組みにおいて,人づくりや意識醸成といったソーシャル・キャピタルの形成がそのシステムの根幹として取り入れられていることが明らかとなった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の通り,地域マーケティングの事例における地域住民間のソーシャル・キャピタルの形成と効果に関して検証することができ,研究の進捗が認められる.また,地域住民と都市住民間のソーシャル・キャピタルの検討に関しては,未だ十分な成果が得られていないものの,次年度以降の分析データを獲得することができた.以上のように,次年度に繰り越された研究があるものの,次年度に予定していた研究が一年繰り上がって完了したので,概ね順調に進展していると達成度を評価した.
|
今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては,地域のソーシャル・キャピタルの地域マーケティングへの効果を検討していく.そのために,地域の美術館・博物館と道の駅を対象とした2つの事例研究を通して,第1に,それらの施設の存在が地域のソーシャル・キャピタルの醸成に貢献しているかどうかを明らかにすること,第2に,これらの施設が地域内あるいは地域外利用者に対して地域のソーシャル・キャピタルを意識させることができるか,さらにソーシャル・キャピタルがマーケティング戦略上の効果を有しているかどうかを明らかにする.
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初計画にはなかった他の予算により物品を購入することができたため,経費を若干節約し,前年度の研究費を有効に使用することができた.
|
次年度使用額の使用計画 |
年間を通じて,アンケート調査関連(調査旅費,調査補助謝金,消耗品一式,アンケート郵送料)に約40万円を支出する.データ解析用PCに約20万円,データ入力謝金に約15万円を支出する.成果報告関連(学会参加旅費,学会誌投稿料)に約20万円を支出する.ソーシャル・キャピタル関連図書の購入に約5万円を支出する.以上を合わせて,約100万円の使用を計画している.
|