研究課題/領域番号 |
24580324
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
磯田 宏 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (00193392)
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キーワード | 米国農業 / 穀物産業 / 多国籍アグリビジネス / 地域農協 / 穀物価格高騰 |
研究概要 |
平成25年度の研究実施計画は大きく3つの部分からなる。 (1)穀物関連アグリフードビジネ個別企業の事業展開・収益基盤等の分析であるが,これについは代表的な関連業界紙誌であるFeed stuffs,Milling & Baking,World Grain,Food Business News,Meat & Poultryを購読し,関連記事の抽出・収集・整理を行なった。また代表的巨大企業のうち財務情報を公開しているものについては,これを収集し整理・分析に着手した。 (2)米国系アグリビジネスによる国際事業展開の統計的分析であるが,これについては「合衆国対外直接投資統計(US Direct Investment Abroad Benchmark Survey」を入手・整理したが,その分析については緒に就いたところである。 (3)米国現地調査については,計画どおり大平原北部春小麦地帯であるモンタナ州で実施し,①乾燥・冷涼で春小麦,さらに牧草適地であった同州でさえ灌漑可能地域ではトウモロコシ栽培が部分的に入っていること,②より東部・南部に位置する従来の小麦主産地州でトウモロコシへのシフトが起きたため同州春小麦の価格上昇と調達競争激化が生じていること,③そのため米国系大型農協,日系を含む多国籍アグリビジネスが集荷拠点形成と垂直的統合を急進させていること,④それら農協やアグリビジネスが,小麦集荷を確保したり高額農業生産資材販売を促進するために,対農場与信事業を開始・拡大していること,⑤これらを通じて穀作農場のいっそうの工業化と大規模化が促進される一方,主として中小規模農場向けの作業受託会社が展開していること,などが明らかとなり,同州における穀物産業の最新の動向について重要な情報・統計的事実を収集することができた。それらの分析にも着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度(平成24年度)に,本研究課題申請時に予期していなかった環太平洋連携協定(TPP)への日本参加問題が急激に進展・深刻化したため,想定外の研究エフォートを当該問題に注力せざるを得なくなった。その状況が今年度も継続しており,昨年度来の「若干の遅れ」を完全に取り戻すまでには至らなかった。 具体的には,①平成24年度に実施したネブラスカ州調査と25年度に実施したモンタナ州調査のうち,とくに農場経営実態調査の分析,②「合衆国対外投資統計」を用いた米国系アグリビジネスの国際事業展開の本格的な分析を,それぞれ平成26年度に継続することになる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究計画(採択時点)は,(1)研究期間内に収集・蓄積した米国穀物関連アグリビジネスの代表的企業の事業展開と収益基盤の情報・財務統計等を分析し,穀物価格高騰時代におけるその構造と動態の特質を分析すること, (2)2012年農業センサスが公表された場合にはその統計データも利用して,価格高騰時代における中西部穀作農業構造の変動と到達点について分析すること, (3)米国現地調査は,米生産量全米第1位のアーカンソー州(可能ならルイジアナ州を含める)において実施すること,その場合,南部米作地帯最大級の集荷・精米農協であるRiceland FoodsとProducer's Rice Millを拠点的調査対象とし,それらの組織・事業構造と展開を調査すると同時に,両農協組合員農場経営の実態調査を行ない,穀物(とりわけトウモロコシ)価格高騰段階における土地利用の変化(水稲・大豆型から水稲・トウモロコシ型への変容など)をはじめとする経営方式や収益構造の変化について情報収集を行なうこと, そして(3)3ヵ年の調査研究をふまえた総括的な分析を行ない,結果を取りまとめること,である。 これらの計画を最大限推進するが,平成24年度,25年度における計画達成の若干の遅れを取り戻し,十全かつ包括的な分析を行なうため,状況によっては研究資金の一部を繰り越して平成27年度(4ヵ年目となる)に研究を延長申請することも検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
①前述で説明した「研究計画の若干の遅れ」のため,および②現地調査に充てることのできる大学下記期間中の入試関連業務・学会業務と調査先事情のすり合わせの結果,当初想定していたよりも現地調査(滞在)期間を短縮せざるを得なくなったため,平成25年度からの繰り越し金235,056円が発生した。 平成25年度から26年度に繰り越された235,056円については,米国穀物関連アグリビジネスの代表的企業について収集した業界紙誌情報の整理・分析,「合衆国対外投資統計」を中心とする米国対外投資統計情報のより詳細な分析,「合衆国経済センサス」「同工業統計」を用いた各種穀物加工業のデータ収集と整理・分析,ネブラスカ州・モンタナ州の農場実態調査結果の詳細な分析と取りまとめ,それらに必要な文献・書籍の購入,および必要な場合はデータ入力等の雇用人件費に充てる。平成26年度請求の130万円(直接経費)については,前記「今後の研究の推進方策」に記した26年度研究実施計画のための支出に宛てる。
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