研究課題/領域番号 |
24580339
|
研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
森嶋 輝也 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター農業経営研究領域, 主任研究員 (30391486)
|
研究分担者 |
河野 恵伸 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター農業経営研究領域, 上席研究員 (70355478)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 食料産業クラスター / イノベーション / ネットワーク構造 / ゲートキーパー / コーディネーター |
研究実績の概要 |
1)主体間のネットワーク構造の分析:熊本県南部の柑橘クラスター(協調型)と長野県南部の柿クラスター(競争型)のネットワーク・データについて、SNA(Social Network Analysis)の手法を用いてそれぞれのクラスターを構成する主体間のネットワーク構造分析を行った。その結果、前者の柑橘クラスター(協調型)では特定の主体(農協)をハブとするスター型のネットワーク構造を取っていたのに対して、後者の柿クラスター(競争型)は中心性の高い主体が存在しない相対的にフラットなネットワーク構造となっていた。これは、前者の事例では農協が加工原料となる柑橘の供給を独占しているため、そこがネットワークのマネジメントを可能にしているのに対して、後者の事例では原料確保の段階から競争があり、製品開発も各自で進められていることによる。ただし、柿クラスター(競争型)では地域ブランド管理のための協議会組織を立ち上げており、そのネットワークが持つコールマン型の社会関係資本が過当競争を制限すると共に全体のパフォーマンスを底上げするように機能している。 2)イノベーションの創出・導入方策:1)の分析結果から、イノベーションをもたらすナレッジのネットワークと製品流通のビジネス・ネットワークが重なっている柑橘クラスター(協調型)に対して、柿クラスター(競争型)では両ネットワークが併存しているという知識フローのメカニズムの違いが明らかとなった。ここから、製品開発におけるイノベーションの創出・導入のためには、六次産業化タイプの統合戦略を採る協調型クラスターでは、ハブ組織のコーディネーター機能が、一方、農商工連携タイプの提携戦略を採る競争型クラスターでは、他のネットワークと接続するゲートキーパーの存在が重要になると言える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
食料産業クラスターにおける競争型と協調型の位相の違いに応じたイノベーションの創出・導入方策について、メゾレベル(ネットワーク構造)とミクロレベル(製品開発戦略モデル)での解明を行ったが、クラスター形成の環境要因の国際比較を通じたマクロレベルでの解明が不十分となっている。
|
今後の研究の推進方策 |
クラスター形成の環境要因の国際比較を通じたマクロレベルでの解明を行うため、食料産業クラスターの日独比較調査を拡充する。具体的には、消費地近接型で協調型のドイツ・ブランデンブルク州のクラスターと比較するために、日本の神奈川県のクラスターを新規に調査対象地とする。また、産地立地型で競争型の熊本県柑橘クラスターと比較するために、バイエルン農民連盟の協力を得て、ドイツ・バイエルン州の馬鈴薯クラスターの詳細な再調査を行う。これらの比較調査の結果から、マクロレベルでのイノベーションの創出・導入方策を解明する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
食料産業クラスターの分析を行うに当たり、調査対象地における農業・食品関連企業のデータを収集する必要があった。そのため、企業データベースを運用している会社から当該企業の情報を購入することとしたが、これまでの経験から見込んでいた料金と比べて、精度Aランクの情報だと価格が積算額の二倍近いのに対して、Bランクだと約半額という価格を提示されたため、後者を選択し、結果として残額が発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
これまでの海外調査の結果、研究課題とするイノベーションのタイプの違いについて概要を明らかにすることができたが、より詳細な分析のためには追加の現地調査を必要とする。幸い今年度の調査対象先(バイエルン農民連盟)から協力の申し出を受けたため、次年度はバイエルン州の生産者団体・加工場・流通企業等の調査を行い、南部ドイツの食料産業集積状況を解明する。次年度使用額331,764円はこの調査の旅費として使用する。
|