研究課題/領域番号 |
24580347
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
黒田 久雄 茨城大学, 農学部, 教授 (20205256)
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キーワード | 蓄積窒素 / 脱窒活性 / 湧水 / 井戸 / 畑地 |
研究概要 |
平成25年度の研究経過は、①文献調査から、霞ヶ浦流域の1970年から2010年までの流域の窒素フローをまとめた。特に農業・畜産系と人との関係を窒素フローにした。その結果、畜産廃棄物と北浦全窒素濃度に強い関連が認められる結果を得ることができた。GISを用いた可視化まではできなかったが、蓄積窒素を表す手法の一つとして利用できることがわかった。②面源負荷対策として、宍塚大池上流部の農業用ハウス下流部での窒素動態として湧水7カ所を引き続き調査した。また、湧水とハウスの間に、上流部2地点(約6m程度の井戸)と下流部3地点(約1mから4mまで)の観測井を掘った。その結果湧水の変動と同様に、一カ所の観測井の濃度変動が大きく季節変動を起こしていることがわかった。今後長期的に追いこの変動の原因について、さらに調査を進めて明らかにしていく予定である。③蓄積窒素調査として、鉾田川流域で土地利用の異なる4地点でボーリング調査を行った。土地利用は、市街地、休耕畑地、林地、市営プール跡の荒地である。各地点で、10mまでコアボーリングを行った。不攪乱土壌をサンプリングし土壌分析と脱窒活性を測定した。その結果、まず脱窒活性はアセチレン阻害法を用いた分析を行ったが、鉾田地域で測定した水田の脱窒活性よりも2桁低い値でほぼ脱窒活性が認められないことがわかった。これは、深さ別にも測定したが大きな変化は無かった。蓄積窒素に関しては、畑地以外での検出はほぼ無かった。畑地は10年間休耕していたが最下層で硝酸態窒素濃度が約16mg/l見いだされた。この値は周辺井戸とも同様の値であった。10年程度休耕していても下層部で窒素が残存していたことは、鉛直異動なのか、他の畑地からの地下水移動なのか今後検討が必要である。これらのことから、土層下層に浸透した窒素が脱窒される可能性小さいことまで明らかにできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献調査と資料収集から、霞ヶ浦流域を対象とした広域窒素フローモデルの大枠はほぼ終了している。このモデルと霞ヶ浦流入河川の窒素濃度、霞ヶ浦(西浦、北浦、常陸利根川)との窒素濃度の変遷について検討を行うことで、モデルの持つポテンシャルを活かした面源窒素負荷および蓄積窒素の影響を明らかにすることを可能とするために、さらに改良を加える必要がある。それには、霞ヶ浦に関する水質データの精査が必要である。 蓄積窒素に関して2通りの調査を行っている。一つは、宍塚大池上流部にある唯一の面源発生源であるハウス栽培からの影響調査である。これについては、2年間の湧水調査から年変動があることが明らかになってきた。また、ハウスと湧水の間に5カ所の観測井をボーリングすることで窒素の流れも明確になってきている。しかし、ハウス内でのボーリング調査がなかなかできないため、ボーリングポイントを増やす必要がある。 もう一つは、窒素汚染のある鉾田川流域で土地利用の異なる4カ所(市街地、荒地、畑地、森林)の10m不攪乱ボーリング調査を行った。特に過去10年間休耕であった畑地下層で窒素濃度が高いことが明らかになった。また、荒地においても下層に窒素濃度が高いことが判明し、数十年前の畑地の影響か検討している。さらに各層で脱窒活性を測定したところ、非常に小さい値であり、下層中での窒素浄化はほぼ無いことを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は最終年度となるために、まとめに入る。 広域窒素フローモデルを用いながら、施肥と蓄積窒素の関係、さらに霞ヶ浦への影響要因を明らかにする。 宍塚大池湧水調査は、観測井を増やして窒素流出状況をさらに明確化する。 鉾田川流域では、現在耕作を行っている農家と交渉中であり、8月頃にボーリング調査を行い、蓄積窒素の状況について明らかにする。 これらを取りまとめて、面源窒素汚染のメカニズムを検討するとともに、窒素汚染の軽減策につながる方針を検討することとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、24、693円と若干使用額が残ったがほぼ順調に研究費に用いたと考えている。最も大きな理由として、分析に必要な消耗品の交換頻度を減らせたことである。 次年度使用額の使用計画は、ボーリング調査に伴う、土壌分析と水質分析費用として薬品、水質分析用消耗品がかかるためこれらに使用する予定である。 翌年度は、ボーリング調査、湧水調査、地下水調査に消耗品がかかるために利用する。人件費・謝金もこれら分析に利用する。旅費は、調査用ガソリンと研究成果発表用に用いる。その他として、論文発表に用いる予定である。
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