農業経由来の蓄積窒素負荷は、新しい概念として提案しているものである。指定湖沼の湖沼水質保全計画では面源由来の窒素負荷は溶脱率を基本に計算してきた。しかし、霞ヶ浦流入河川の多くは、溶脱率のみでは説明の付かない減少が起きていた。それは、施肥肥料が削減されても河川の窒素濃度は逆に高くなっている現象があったからである。 1994年頃に馬の厩肥を投入された畑地下流の湧水調査の結果から肥料投入は時間遅れがある現象を把握していた。鉾田川で平成19年に環境基準を超過する一時的な窒素濃度の増大が先の現象と酷似していることを見いだし、この現象は蓄積窒素によるものと発表してきた。この提案については、実証証拠が無いことから本研究で実態を明らかにすることにした。 結果として、茨城県との協力の中で5カ所の異なる土地利用下のボーリング調査を行うことができた。特に以前畑地でその後30年近くプールであった箇所は、2011年頃にプールを撤去した結果、推定していた蓄積窒素の動態を証拠づけるデータを取得できた。また、他の地点でも下層で窒素濃度が高いなど、施肥をしてない状況でも過去の施肥量が影響を与えていることを明らかにできた。また、下層土中で窒素除去されているという仮説があるが、脱窒活性・窒素除去試験の結果、下層土中では窒素除去が起きていないことを明らかにした。さらに、竹林の地下水位を調べた結果、植生が過剰にある場合、下層浸透が抑制され蓄積窒素が長期間滞留することも明らかにできた。これは逆を言えば、希釈水の現象を意味し、流域の窒素希釈効果を妨げる役割をすることである。さらに、蓄積窒素の浄化には下流水田の窒素浄化機能を有効に活用する以外の方法が無いことを再認識させ、水田土壌中の窒素浄化機能のメカニズムが重要であるという仮説を作ることができた。
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