本研究では,以下を目的として設定した。「①老朽化が進みつつある既存の滞在型市民農園(クラインガルテンとも呼ばれる。以下,KG)の維持管理の方策とその限界,②近年でも進みつつある新たな開設の計画のあり方,③KGの新たな可能性および課題として,特にIターン促進の可能性」。これらに対し,以下の成果を得た。 A)GISを用いたKGおよびその区画の空間分布について,時系列および都市住民の人口分布を考慮した分析を行った。また,それを用いたKG新設計画に関する検討を行った。その結果の一部は農村計画学会誌(2013)に発表した(細谷,井上と共著)。また近年,一部のKGに見られる空き区画が残存している問題についても,KGおよびその区画の密度,ならびに人口分布とである程度まで説明できた(投稿準備中)。これらにより,上記の①②,特に②については目的を概ね達成できた。 B)市町村消滅論に対抗する形で田園回帰が注目されている中,市町村によるIターン促進取組(KGを含む)について悉皆的に検討し,その傾向を把握した。東日本について農村計画学会誌(2014)に公表した(平林,細谷と共著)。また全国のデータは都市住宅学会誌(2015)に発表した(単著)。なお,移住促進取組については高齢化日本一とされる群馬県南牧村を事例とした調査を続けており,それについても『福島 農からの日本再生』(守友ら編著,農文協,2014)などで発表した。 C)その他の業績として,東日本大震災がKGにもたらした影響について,農村計画学会誌(2012)に発表した(井上と共著)。また本研究の過程でKGの現状を広く把握できていることから,農業農村工学会誌(2014)に小講座として寄稿した(単著)。
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