小課題「泥炭土壌試料の培養・CO2放出量分析の予備試験」について、泥炭土壌供試体の培養器を試作した。これらに泥炭土壌供試体(50cc)を装填し、供試体からのCO2放出量を、クローズドチャンバー法の応用により、25℃の恒温条件下で経時計測した。泥炭土壌供試体の由来は、北海道の美唄湿原内の、地下水位が100㎝程度に低下した領域における、深さ10~60cmの6深度とした。 これら6深度に由来する各泥炭土壌供試体の水分条件を、地下水位が深さ100cmに存在する状態を模したそれに設定し、双月の間、維持した。そして、各泥炭土壌供試体からのCO2放出速度を、双月のうちに21回、評価した。各評価回では、60分間、径50mm・高さ95㎜の培養器上部空間を密閉する時間を設け、密閉時間内で20分に1回、培養器内の気体10mlを10mlシリンジを用いて密封採取し、気体試料とした。採取回毎の気体試料中のCO2濃度を、前年度までに開発したCO2濃度分析系を用いて評価し、培養器内のCO2濃度の時系列変化を定量した。この時系列変化を、泥炭土壌供試体がその体積当・一日当に放出するCO2の質量に換算し、CO2放出速度とした。 CO2放出速度は、その単位を[mgCO2 cm^-3 d^-1]として、採土深度が10、20、30cmの供試体については0.1程度、採土深度が40、50、60cmの供試体については0.05程度から始まり、培養期間の開始後3週間程度のうちに、それぞれ、当初の5割程度に低下した。CO2放出速度はその後、いずれの供試体においても低下を続け、58日目に0.02~0.04程度に至った。これらの放出速度の推移を双月の間で積算した処、分解対象土層の大きさが厚さ60cm×面積1ヘクタールである場合、約25トンのCO2放出量に相当した。
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