研究課題/領域番号 |
24580352
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
渡邊 裕純 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80323757)
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研究分担者 |
加藤 亮 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (10302332)
五味 高志 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30378921)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Paddy rice / Pesticide / Modeling / Watershed / Pollution / PCPF-1 / SWAT / California |
研究概要 |
1.流域スケールでの水稲用農薬の動態予測モデルシステムの構築: 本年度は、水・物質循環モデルSWATをプラットフォームとし、そこに水田農薬動態モデルPCPF-1を組み込み、流域スケールでの水稲用農薬の動態シミュレーションを可能とした。この新規開発モデルをPCPF@SWATと称する.連携研究者の農業環境技術研究所の稲生氏より、PCPF@SWATモデルの検証用のデータを提供および検証作業への協力を頂いた。検証用流域の茨城県桜川流域の地理情報(土地利用,農薬使用,水管理,土壌特性)データや検証用比較データとしての河川流量、田面水中および河川中の農薬濃度を提供機関より入手し、2006年および2007年をモデルキャリブレーションの期間、2008年を検証期間としてシミュレーションを行った。 2.カリフォルニアの水田環境現地調査:先ず,5月14-20日、別予算で米国農務省農業研究サービスを訪問し、予備研究の進捗と、研究計画について打ち合わせを行った。またカリフォルニア大学デービス校農業普及センター(UCCE/Hill氏),カリフォルニア環境保護局・農薬規制部(CDPR/Luo氏)の協力を経てサクラメント川流域に点在する水田地域での稲作作付け管理,水管理,農薬使用情報データを抽出し整理した.次に,8月5-13日本予算によりカリフォルニア大学デービス校LAWR学科の農業GIS研究室での研究進捗状況を発表した.更に,サクラメント川流域灌漑局の協力を経て現地サクラメント川流域の地理情報データ、環境,気象,流量データを取得した. 3.モデル検証に使用する除草剤の動態パラメータの定量:小型水田ライシメータおよび室内試験により,水田環境での除草剤の消長,土壌吸着,分解などのパラメータの定量を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 流域スケールでの水稲用農薬の動態予測モデルシステムの構築:本システムは、基本モデルの構築、パラメータ設定用逆解析モジュール、モデルパラメータデータベースからなる。現在までの達成度は70%とする。基本モデルの構築は稲作水田のシナリオの開発、SWATモデルの改良およびPCPF-1モデルの移植を進めた。日本の流域データを用いて検証を行った。PCPF-1モデルの改良に関して国際誌に2報投稿を行った。モデル開発の成果は、北京での国際学会、農薬環境科学研究会、土水研究会、農薬学会で発表し、現在投稿論文の執筆中である。現在海外水田への適用として、現地調査で得たデータを用いてカリフォルニアサクラメント川流域の水田農薬の動態モデル化を進めている。パラメータ設定用逆解析モジュール、モデルパラメータデータベースに関しては、現在プログラミングが進行中である。 2. カリフォルニアの水田環境現地調査:2回の現地調査を経て、現地の詳細状況が得られた。収集した資料を基にカリフォルニア稲作シナリオ、農薬使用状況シナリオ、地理情報データファイル等の構築、河川流量および河川水中農薬濃度のデータファイルの構築を行うことができた。しかし同時に、サクラメント川流域の水田の灌漑排水状況が非常に複雑であり、詳細な状況を把握するには多くの時間を要することが判明した。 3.モデル検証に使用する除草剤の動態パラメータの定量.水田ライシメータを用いた試験による水田除草剤の動態に関して国際誌に投稿した。また、前年度から引き続き行ってきた水田除草剤のモデルパラメータの定量を終え、現在投稿論文の準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
開発した流域スケールでの水稲用農薬の動態予測モデルPCPF-1@SWATの日本の水田を含む流域での検証作業は間もなく完了し、現在論文投稿を準備中である。 カリフォルニア水田環境調査およびモデルシナリオの構築とモデルカリブレーションに関して、H24年度に取得したデータおよびH25年度調査の結果を基にカリフォルニア州サクラメント側流域の水田地帯での農薬動態予測に向けてモデルシナリオを構築する.しかし、水田水動態のモデル化に関して、カリフォルニア水田の灌漑排水組織が非常に複雑で、小集水域間、灌漑区間での灌漑排水の移動が複雑で、詳細データを把握するのは難しい。また、サクラメント川流域が平坦なため標高データによる水移動の計算に不具合が生じる傾向にある。したがって、今回の研究でのSWAT@PCPF-1モデルによるカリフォルニア水田への適応に関する方針として、サクラメント川流域の水田農薬動態モデル化のフレームワークと位置づけ、まず簡素化したモデル化により農薬動態シミュレーションを試みることとした。 また、パラメータ設定用逆解析モジュールはPCPF-1モデルの基本構造を応用して構築を進めている。モデルパラメータデータベースにおいてはこれまでPCPF-1で検証された4除草剤に加え、PCPF-1で予測可能な薬剤(プレチラクロール、ベンスルフロンメチル、イマゾスルフロン、ブタクロール、ピラズスルフロンエチル、箱施用殺虫剤等)に関してパラメータ設定用逆解析モジュールを用いてデータべ―ス用のパラメータを設定する。 日本またはカリフォルニアのシナリオにおいて、データベースに登録された農薬の流域スケールでの予測および動態評価を行う。日本およびカリフォルニアでの農薬管理シナリオにおける水稲用農薬の動態解析を行い,環境負荷削減のための最適管理策の提言を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に研究進捗の修整のため、前倒し予算を申請した。このため平成25年度は当初計画の300,000円減での研究遂行となるが、今後の研究成果には影響はないと考える。平成25年度の研究費は、全体で、1,000,000円である。内訳は、物品費260,000円、旅費、500,000円、謝金等100,000円、その他140,000円である。 物品費は箱施用殺虫剤の動態パラメータ定量用追加試験等に使用するガラス器具と試薬を計画している。旅費は、国際会議での成果発表、および研究打ち合わせに使用する。国際会議は6月16日から22日までインドネシアボゴール農業大学で開催予定のSWATモデル国際会議である。そこでは、これまでの成果の発表および今後のモデル適用に関して専門家と打ち合わせを計画している。また、7月にフランスで開催されるSWATモデル国際会議でも成果発表を計画しており経費の一部を使用する予定である。謝金等は、室内試験データおよびシュミレーションデータの解析のための研究補助員への謝金とする。その他に関しては主に論文投稿時の英文校閲、および投稿料を計画している。平成26年度は200,000円減での研究遂行となるが、今後の研究成果には影響はないと考える。
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