研究課題/領域番号 |
24580355
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
小林 範之 愛媛大学, 農学部, 教授 (00314972)
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研究分担者 |
西山 竜朗 愛媛大学, 農学部, 准教授 (30294440)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ため池 / 常時微動 / 性能劣化予測モデル |
研究概要 |
農業用ため池は,その約75%が築造されてから100 年以上経過しており,数多くのため池が何らかの機能障害を起こしている.このように老朽化によって本来の健全な状態が損なわれていると,被害が発生する可能性がより高くなり,近年では地震や豪雨によるため池災害がしばしば発生している.そのため,大規模地震に対する老朽ため池の改修や地盤特性に応じたため池の耐震対策は緊急を要している.本研究では,ため池の耐震対策のための耐震診断として,ため池堤体の劣化と卓越周期および増幅特性の関係を非破壊物理探査法により推定することを目的とする.またその関係から,ため池劣化度診断システム,ため池劣化度-動特性モデル,ため池性能劣化予測モデルを構築する.本課題では,「非破壊物理探査法によるため池堤体の諸量の計測」,「ため池劣化度診断システムの構築」,「ため池劣化度-動特性モデルの構築」,「ため池性能劣化予測モデルの構築」の4ステップに従い研究を進めるが,本年度はステップ1を実施した. ●比抵抗電気探査:比抵抗電気探査は、地盤に電流を流して地盤の電気抵抗分布を調査するものである.計測項目は溜池堤体の比抵抗分布および含水状況とした. ●高精度表面波探査:起震機(人口震源)により地表面に上下振動を与えることにより発生させたレイリー波を検出器により検出し,その伝播速度を測定する.計測項目はS波速度構造および溜池堤体内部の空洞とする. ●常時微動計測:微小な地盤振動を測定して,ため池堤体の動特性の推定や地盤種別の判定などに利用する.計測項目は卓越周期,増幅特性とした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
愛媛県の2か所の漏水ため池で,比抵抗電気探査,高精度表面波探査,常時微動計測を複数回行い,堤体内の含水状況,Vs構造,卓越周期および増幅特性を把握した.また,これらの結果を研究成果を第20回日本雨水資源化システム学会大会で発表した.さらに,平成25年度農業農村工学会大会講演会に投稿した.
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今後の研究の推進方策 |
本課題では,「非破壊物理探査法によるため池堤体の諸量の計測」,「ため池劣化度診断システムの構築」,「ため池劣化度-動特性モデルの構築」,「ため池性能劣化予測モデルの構築」の4ステップに従い研究を進めるが,平成25年度ははステップ2,3を実施する. ●ステップ2:貯水位を変化させて比抵抗電気探査を実施し,その結果を比較すれば,堤体内の含水状況が把握でき,遮水性に対する劣化度が評価できる.また,表面波探査結果からは,堤体のVs 構造がわかり,強度に関する劣化度が評価できる.さらに,双方の結果を総合的に診断するために,自己組織化マップを用いたシステムの開発を行う. ●ステップ3:ステップ2 で開発したため池劣化度評価システムでは,ため池の縦・横断面における2 次元の劣化度が求められる.したがって,劣化度はため池の位置により異なるため,その位置で常時微動を計測する.これより,ため池劣化度-動特性(卓越周期,増幅特性)関係が得られる.さらに,ため池諸元(堤高,堤頂長)の異なる堤体での調査により,諸元に依存したため池劣化度-動特性モデルを構築する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に引き続き,複数回の調査を行うため,旅費および謝金が研究費の約50%を占める.物品費は50万円以上の物品を購入する予定はなく,すべて消耗品である.また,学術論文集への投稿を予定しており,その投稿料を計上している.
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