研究課題
農業用ため池は,その約75%が築造されてから100 年以上経過しており,数多くのため池が何らかの機能障害を起こしている.このように老朽化によって本来の健全な状態が損なわれていると,被害が発生する可能性がより高くなり,近年では地震や豪雨によるため池災害がしばしば発生している.そのため,大規模地震に対する老朽ため池の改修や地盤特性に応じたため池の耐震対策は緊急を要している.本研究では,ため池の耐震対策のための耐震診断として,ため池堤体の劣化と卓越周期および増幅特性の関係を非破壊物理探査法により推定することを目的とする.本課題では,「非破壊物理探査法によるため池堤体の諸量の計測」,「ため池劣化度診断システムの構築」,「ため池劣化度-動特性モデルの構築」,「ため池性能劣化予測モデルの構築」の4ステップに従い研究を進めるが,本年度はステップ3, 4を実施した.昨年度の非破壊物理探査結果より,貯水位の変動により常時微動の値に変化が見られ,卓越振動数にも影響することがわかった.しかしながら,貯水位と堤体内の浸潤線の変動は必ずしも一致しないため,貯水位と卓越振動数の間に一定の法則性がみられなかった.そこで,地下水位変動と地盤卓越振動数の関係を明確にするために,実験土槽内で模擬地盤を作成し,常時微動計測を実施した.また,ポータブルコーン貫入抵抗試験による貫入抵抗値および有効応力と地盤卓越振動数の関係の検討を行った.貫入抵抗値および有効応力が小さくなると,卓越振動数も小さくなる明確な傾向が示された.貫入抵抗値および有効応力と劣化度の関係を示すことにより,ため池劣化度-動特性モデルおよび劣化予測モデルが構築できることになる.
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件)
Journal of Rainwater Catchment Systems
巻: 20 ページ: 23-28