研究課題/領域番号 |
24580356
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
佐藤 周之 高知大学, 教育研究部自然科学系, 准教授 (90403873)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アルカリシリカ反応 / 廃タイヤ / 機能性コンクリート / モルタルバー法 / 膨張抑制効果 |
研究概要 |
本研究課題では,コンクリートの劣化の中でも特にアルカリシリカ反応(ASR)を対象とし,廃タイヤを利用した「ASR抑制機能」に特化した機能性コンクリートの開発を目的としている。初年度(H24年度)は,廃タイヤを混和材としてコンクリートに利用する際の①ワーカビリティ,②物理的特性,③力学的特性の評価を行った。 廃タイヤ破砕物を粒度20mmアンダーで選別し,粗骨材への内割りで体積置換してコンクリート供試体を作成した。その結果,廃タイヤの混入はワーカビリティに大きな影響を及ぼすことはないこと,混入率が大きいほど密度が小さくなることを確認した。力学的特性として,コンクリートの基本的性能である圧縮・曲げ強度は,混入率が大きいほど小さくなること,混入率と両強度の関係は線形で近似できることを明らかにした。 一方,ASR抑制効果を検証するためには,ASRを人為的に生じさせる必要がある。つまり,反応性骨材のASR特性を明確にするための実験系が必要となる。そこで,反応性骨材として,入手の容易さと既往の研究を参考にガラスカレットを選定し,ガラスカレット混入量と膨張量の関係をモルタルバー法にて明確化した。 上記の廃タイヤのコンクリート混和材としての特性と反応性骨材のASR膨張特性を明らかにした上で,廃タイヤのASR抑制効果の検証のための実験系を開始した。具体的には,廃タイヤ破砕物をさらに細かく5mmアンダーとなるように粉砕・調整をした上で,細骨材置換率を変えたモルタル供試体を作成し,モルタルバー法によるASR試験を開始した。検討項目は廃タイヤの粒度(3規定),混入率の違いがASR膨張特性へ及ぼす影響についてである。モルタルバー法は評価に半年以上必要となるため,鋭意実験を進行させているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題で取り扱うアルカリシリカ反応の評価方法には数種類あるが,現在最も角度が高いとされるのがモルタルバー法であり,本方法は一系統の実験終了まで7ヵ月は必要となる。この期間の長さを考えると,当初予定した計画通りあるいはそれを若干上回る速度で実験を進めることができていると考える。 研究成果の開示については,平成25年度に決定している国内学会が1報,予定としては国内学会がさらに1報,国際会議が1報であり,知見の集積ならびに成果の公表も順調に進んでいると考える。 以上の成果をもって,平成24年度の達成度としては概ね順調に進展しているものと判断をした。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度までに揃えた機材により,廃タイヤの粒度および置換率を変えてモルタルバー法による実験を継続して進める。これらの成果について,速やかに成果の公表を国内・国外を問わず進める予定である。 一方,ASRに大きく関与する物質は,コンクリートの外部から供給される水である。そこで,当初計画通り,コンクリートの透水性についての検討を平成25年度より開始する。 一般的に,ASRが生じたコンクリートへの対策には水分の遮断が有効とされる。平成24年度の実験では,ASRが発生したモルタル供試体に対して,水分を遮断する封緘養生を行い,力学的性能の回復を評価した。その結果,水分の供給を断つと自己修復機能を発揮することが明らかとなった。 そこで,研究の一つの方向性として,コンクリートの透水性を小さくし水分供給が進まない状態にできるかどうか(緻密化を図る手段)の検討を実験的に進める予定である。具体的には,簡易透水試験を実施し,廃タイヤ混入と水密性の関係を明らかにする計画を進めている。 もう一つの研究の方向性としては,ASRが仮に生じたとして,それをどう抑制するのか,という対策技術の開発である。廃タイヤを混入した際に,自己修復機能がどのように変化するのかを実験的に明らかにする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
「該当なし」
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