研究課題/領域番号 |
24580356
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
佐藤 周之 高知大学, 教育研究部自然科学系, 准教授 (90403873)
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キーワード | アルカリシリカ反応 / 廃タイヤ / 機能性コンクリート / モルタルバー法 / 膨張抑制効果 |
研究概要 |
本年度は,前年度に引き続き,①粒度を調整したガラスカレットを用いたモルタルを作成し,モルタルバー法によるASRの膨張特性の評価を行った。また,②廃タイヤ粉砕物の粒度を調整し,モルタルに細骨材内割置換で各種供試体を作成し,モルタルバー法によるASR膨張特性の変化を検証した。さらに,③低水圧透水試験によるコンクリートへの水の浸潤特性について,その評価方法を検証した。 ①については,ガラスカレットを用いて所定の膨張性を有するモルタルを作成することできた。また,ガラスカレットの混入率ペシマムを確認するとともに,粒度ペシマムについて明らかにすることができた。 ②については,廃タイヤをワンダーブレンダーにて微細に破砕し,粒度5mm以下をモルタルの細骨材として内割置換した供試体をモルタルバー法で評価した。置換率を数規定変えてASR抑制効果の有無を検討したが,すべての置換率で抑制効果を確認することはできなかった。この原因は,廃タイヤの材質が弾力性を有するため,膨張圧の吸収よりも,本来骨材が持つべき膨張拘束効果を発揮できないことが原因と考えられた。そこで,廃タイヤの粒度をさらに小さくし,置換量もAEコンクリートの空気量と同程度まで抑えた状態での評価を行うこととし,モルタルバー法による実験を継続している。なお,粒度をより小さく,また置換率も小さくしたモルタルを凍結融解試験に供した結果,顕著な凍結融解抵抗性の向上が確認できたことから,廃タイヤの粒度に焦点を当てていく予定である。 ③については,②の実験の進捗が若干遅れたことから,本年度は簡易な定水頭透水試験装置の試作を終え,普通コンクリートの透水試験を測定した段階である。ASR抑制効果を有するモルタル・コンクリートの基本配合を確認後,速やかに着手する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までのところ,廃タイヤの破砕粒径をコントロールする方法,モルタルの流動性,廃タイヤ破砕物のモルタル中での分散性,硬化後の物理的特性,力学的特性について,概ね順調に検討を終えた。また,実験条件として必要となるASR膨張については,ガラスカレットを利用することで,安定した実験条件の確保を可能にした。 これら諸結果を利用し,平成25年度は,廃タイヤを細骨材利用することでASR抑制硬化を明らかにする予定であった。しかし,使用した廃タイヤ破砕物の粒径に大きいものが含まれており,これが細骨材としての機能までを十分に発揮できないため,ASR膨張抑制効果を発揮できないことが明らかとなったことから,廃タイヤ破砕物の粒径が細かいものに対象を絞り,かつ置換率を小さくしてモルタルバー法による再検討を開始している状況である。当初計画としては,平成25年度よりASR抑制効果の実験を開始することとしており,大きく計画から遅れているとはいえないと考える。 また,低水圧を作用させた状態でのモルタル・コンクリートの透水性ならびに水の浸潤性について,基礎となる評価試験方法は今年度確立できた。最終年度となる平成26年度に,ASR抑制効果を有するモルタル・コンクリートの配合条件を確定後,速やかに透水試験を実施する予定である。 以上のことから,当初の研究目的を逸脱することなく,また研究自体もおおむね順調に進んでいる,と判断をした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,モルタルバー法によるASR抑制効果に関する実験と,透水性に関する実験の二系統の実験を完了させる予定である。これら二つの実験から得られる知見を集積し,廃タイヤを用いてモルタル・コンクリートの水密性を向上させることで,ASRの進行抑制を根本的に図ることができる材料開発の可能性を検討する。同時に,仮にASRが進行したとしても,廃タイヤの特性を活かした膨張抑制機能を有するモルタル・コンクリート材料の開発を目指す。ASRは際限なく膨張が継続する劣化ではないため,廃タイヤの粒度と置換率によって抑制効果が変化することを実験データとして得ることができれば,新たな機能性材料として有用になると考える。
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