本研究課題の最終年度である本年度は,廃タイヤ混入モルタルのアルカリシリカ反応(ASR)抑制効果に関する実験を終了するとともに,ASR抑制の効果的方法の一つとされる水分供給遮断とモルタル・コンクリートの水密性に関するデータの蓄積を図った。 ASR骨材としては,過去二年間と同様に反応性既知であるガラスカレットのペシマム量を細骨材内割80%質量一定として混入し,廃タイヤチップのサイズおよび混入率を様々に変えて実験を行った。ASR抵抗性の評価も従来通りモルタルバー法(JIS A 1146)に準拠した。水密性試験はポーラスコンクリート用の変水位透水試験を一部改良してモルタル供試体に適用して実施した。 モルタルバー法の適用結果から,廃タイヤを置換率および粒形を変えて混入したモルタルの膨張率は,すべてにおいて無混入のものよりも大きくなる結果となった。すなわち,モルタル内部で発生する膨張圧に対して廃タイヤは緩和効果を発揮しなかった。類似の実験で,ASRと同様の内部膨張圧を伴う劣化である凍結融解作用に対しての実験結果では,廃タイヤチップが抑制効果を発揮したのとは真逆の傾向を示した。この理由としては,廃タイヤチップがモルタル内部で緩衝効果を発揮すべきところを,反応性骨材の膨張圧が卓越していたため抑制できず,逆に廃タイヤチップが脆弱部となった可能性が示唆された。一方,透水試験の結果からは,廃タイヤ混入モルタル中への水分の浸潤量は,普通モルタルのものよりも小さくなる傾向を示したことから,モルタル内部への水分遮断効果を期待することも一つの利用方法である可能性が示唆された。今後,廃タイヤチップの混入率を連行空気量程度に小さくし,モルタルマトリックスの脆弱化を防止しながら,ASR膨張圧の抑制効果を確認していく必要があることが明らかとなった。
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