本研究課題では,水利施設の維持管理に係る負担感を軽減するために,担い手の維持管理に対する参加意欲がどのように形成されるのかを,共分散構造分析を用いて明らかにした.また,担い手が居住する地域の社会構造の変遷や,施設がもたらした便益と担い手の負担との関係の変遷が,参加意欲の心理構造に影響することも指摘した.その結果,水利施設の価値は,一義的には農家のコスト負担と便益とのバランスを適正に保つことで高められると結論づけられた.しかしながら,今後の維持管理等においては非農家の参画が必要不可欠であるため,地域社会の歴史的な変遷を考慮しつつ,健全な営農を継続していくことが重要である.
|