研究課題/領域番号 |
24580361
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
糸長 浩司 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (10184706)
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研究分担者 |
藤沢 直樹 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (10409071)
近藤 昭彦 千葉大学, 環境リモートセンシング研究セン, 教授 (30201495)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 福島県飯舘村 / 福島県川俣町山木屋 / 東京電力福島第一原発事故 / 放射能汚染 / 帰還意識 / 移住意識 / コミュニティ再生 / 災害コミュニティ |
研究概要 |
東京電力福島第一原発事故で計画的避難区域に指定された飯舘村、村民への支援研究である。放射能汚染実態と土地利用の関係性データ化は随時進め、森林、斜面地での除染の難しさを明らかにしつつあり、除染・帰村のみの対策ではなく、コミュニティ移住の施策の必要性を明らかにした。村の伝統的な農的暮らしの避難先での継承策の提案と共同菜園づくりの支援、また、全村民アンケート実施による避難生活の課題、帰村意向、移住意向、生活再建意向の把握と安定した村外居住地の構築、コミュニティ移住権に関する政策提案を行っている。居住制限区域に指定された前田地区、帰還困難区域に指定された長泥地区での成人悉皆アンケート、村民の有権者の悉皆アンケートを実施した。このアンケートは村も実施していない中での貴重な村民の意向を明らかにしたものである。村民の6割以上は早急の帰村意向はなく、特に若者の帰村意向は低い。国や村が帰還目標としての年間20ミリシーベルトではなく、国民の権利の1ミリを権利として要求し、その実現が難しい状況下では、移住と安定した住宅の確保を希望している。これらの意向を受け、行政の積極的な移住策、住宅地の提供、健康補償の獲得、生活再建が可能な賠償金の補償について政策的提案を行った。 計画的避難区域に設定された川俣町山木屋地区は一部を除いて放射能汚染の程度は相対的に小さく、住民のほとんどが同じ町内に避難していることから、将来の復旧、帰還に対する期待が高い地区である。施策のための基盤情報として汚染状況の詳細なマップが必要であるが、山村では低地域だけでなく暮らしと結びついた里山流域の汚染状況を知る必要がある。そこで、GPSと連動させた空間線量率計による歩行サーベイを実施した結果、山地斜面における汚染状況とその分布の特徴を明らかにすることができた。結果は地域と共有し、今後の協働のあり方に関する議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に従っての研究は遂行できている。また、研究成果を農村計画学会等での報告及び、雑誌で掲載されている。災害研究たのため不足事態も生じ、避難民を対象として復興、生活再建に関するWSは不十分であるが、一方で、全村民有権者アンケートを他の研究助成金と合わせて実施し、大きな成果をあげた。本研究対象である、放射能汚染とそれをどう克復するかという、難しい課題の中で、避難民、行政、社会に対しての必要な施策についての提言を実施でき、また、シンポジウムの共同開催により、社会的な貢献も充分で行うことができ、本研究の意義を大きく提示した。
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今後の研究の推進方策 |
飯舘村、川俣町での放射能汚染状況の特徴に関して、継続的な調査を実施する。土地利用種別での放射能汚染状況の特徴、その低減傾向等を明らかにする。短期・中期・長期的な汚染・除染対策と長期的な帰村のための土地利用計画の素案の作成を行い、村民、関係機関に随時情報提供を行う。関係研究者との情報交換により必要なデータも入手し、今後の放射能低減の傾向を把握し、除染対策の意味、プロセスに関しての提言も行う。 村民達の避難先での、農的暮らし意向、農業活動、伝統的な食の継承行動(匠の会等)を支援し、伝統食の継承の意義を明らかにする。農地及び生産された農産物の放射能汚染状況を分析し、今後の避難先での農業に関する留意事項等も明らかにする。 長期的な避難生活が予測される中、帰還出来ない状況下での避難住民の生活再建の具体的な施策を住民と一緒に、WS及びアンケート実施で検討する。現在の避難生活の課題、避難コミュニティの構築手法、福島市内、相馬市内での移住構想・計画案を具体的に検討する。特に、コミュニティ単位での移住策等に関して、避難自治会、属地的自治会等の協力を得て検討し、提案を行い、一日でも早く、生活安定のための実行計画につなげていく。 これらの支援研究成果に関する報告会、シンポジウムを被災地及び東京で実施し、避難生活改善、帰村計画の可能性、移住構想・計画の提案をより社会化、具体化できるようにする。津波被災地域で実施されている「防集移転事業」の原発災害対応版の必要性を明確にして、このような事業展開の必要性を、被災住民と一緒に社会に訴えていく。また、早期帰村を望む村民に対しての帰村生活でのリスク回避のための生活条件、土地利用条件等ついても検討し提案していく。ただ、本災害は初めてのことでもあり、今後は予想を超えた事態も考えられるので適時研究内容・手法の見直しを行いながら、被災住民に寄り添った型で実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
①旅費関係。 飯舘村内の放射能汚染状況調査旅費、飯舘村内の住宅内汚染調査旅費、 川俣町内の放射能汚染状況調査旅費、飯舘村民の帰村意識・移住計画意向に関するワークショップ開催旅費、福島市、伊達市での移住計画ワークショップ開催関係調査旅費 ②謝金関係、上記の調査に関係する補助員の謝金、データ入力解析補助の謝金等 ③調査、データ解析に関係する消耗品等の購入代、関連書物の購入代 ④その他 現地調査でのレンタカー代とガソリン代、調査対象者へのお礼
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