研究課題/領域番号 |
24580362
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
石田 聡 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究所・資源循環工学研究領域, 上席研究員 (30414444)
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キーワード | 淡水レンズ / 揚水 / アップコーニング / ラドン / 地下水 |
研究概要 |
室内実験については、前年度に構築した装置を用いて、淡水レンズの発生実験を行った。実験当初、模擬帯水層の透水係数に対して降水量が若干大きかったため、淡水レンズが膨らみ続けた。このため、降水量を絞るための流量制御装置を新たに設置した。その結果、塩淡境界が安定的に維持されることを確認した。 揚水装置については、前年度の設計を受けて装置を試作し、研究所内の井戸で試運転を実施した結果、下段ポンプの揚水量が十分ではなかったので、装置を改修した。改修した装置を用い、研究所内の井戸で揚水試験を行った。試験条件は、パッカー設置深度:地下水面下2m、揚水量:上段下段とも当初2L/min・水位低下後1L/min、揚水時間:1hとした。揚水量は上下段独立にポンプに給電する電圧をインバータで変化させ調整した。その結果、下段のみ揚水した場合でも上段側の水位は殆ど変化せず、パッカーによる止水が有効であることが明らかになった。また、上下段同時揚水した際のラドン濃度が概ね12Bq/L~10Bq/Lの範囲で経時的に変化することを確認した。さらに、揚水中の水圧・電気伝導度を上下段独立して連続測定できることを確認した。これら結果は、試作した揚水装置で深度別の揚水を実施できることを示している。 数値解析については、沖縄県多良間島においてSEAWATを用いた流動モデルを構築した。 現地調査については、沖縄県多良間島、マーシャル諸島共和国ローラ島において地下水位・電気伝導度の連続観測を継続するとともに、淡水レンズ地下水の賦存形態を明らかにするため、井戸周辺の2次元電気探査を実施した。測定の結果、多良間島では観測孔内に潮汐の影響による鉛直流が発生していることが明らかになり、この影響を除くために測定値を25時間平均することとした。ローラ島では電気探査により、中心部のアップコーニングが限定的である可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
室内試験、揚水装置の開発、数値解析、現地調査とも予定通り実施され、研究は順調に進捗している。特に本研究の中心である揚水装置が試作され、揚水試験により予定通りの性能が確認されたことは、今後の数値解析等の妥当性の根拠となり、研究全体の目的達成に大きく近づいた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に試作した揚水装置を、口径50mmの井戸に適用させるとともに、上段ポンプと下段ポンプの距離が調整可能な形式に改良する。また、ローラ島等の現地調査によって淡水レンズ中のアップコーニングの状況を明らかにする。さらに、数値解析によって揚水装置を用いて揚水を続けた場合の、帯水層内の地下水の塩分濃度の変化を明らかにし、本研究で開発した揚水手法の効果を判定する。
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