深度別揚水装置をシステム化した。止水装置は空気パッカーとし,パッカー上下にそれぞれ水中モーターポンプ,水圧センサ,温度・電気伝導度(EC)センサを配した。揚水量は電磁流量計によって測定し,揚水する地下水のECを確認しながら揚水強度を調整する方式とした。このシステムで揚水を行った結果,パッカー上下のEC,pH,DO,ORPの差が揚水期間中保たれることを確認した。また,パッカー上段のみ,パッカー下段のみで揚水を行った場合においても,揚水を行っていない側の水位に変化はないことを確認した。これらの結果は,作成した装置により2深度の地下水を別々に揚水することができることを示しており,塩淡境界を持つ帯水層に設置された井戸において,パッカーを塩淡境界深度に合わせれば,アップコーニングを抑止する揚水が可能であると考えられた。 また,昨年度までに構築した地下水流動モデルを用いて二重揚水技術のシミュレーションを行った。その結果,塩淡境界がシャープであれば塩水域と淡水域の混合は抑止できるが,汽水域が厚く存在する場合は,淡水域のポンプと塩水域のポンプを離す必要があることが明らかになった。この対処法として,短いパッカーを複数設け,汽水域の上部(淡水域)と汽水域の下部(塩水域)にそれぞれポンプを設置する方法が有効と考えられた。 帯水層の塩水化が顕在化しているマーシャル諸島共和国ローラ島における現地調査では,観測孔におけるEC測定および物理探査によって,ローラ島における淡水レンズ賦存量を明らかにした。これらの調査結果は現地で開催した淡水レンズ地下水保全に関するセミナーにて、関係行政機関担当者等に周知した。 以上,研究期間全体の成果をとりまとめ,本研究で開発した二重揚水技術について特許を出願した(平成26年10月)。また研究成果を簡潔にとりまとめプレスリリースを行い,web媒体や新聞等に掲載された。
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