研究課題
昨年度、選定した薬用植物ニホンハッカ'さやかぜ'とウラウカンゾウ'IV-2'を用い、今年度および次年度で予定している「薬用植物の目的部位の成長および高濃度化に適した環境要因の解明」を実施した。太陽光利用型植物工場等において薬用植物の生産効率や品質を高めるためには、短期間に薬用成分濃度を高める栽培技術が必要である。明期における過度のUV照射は植物の生育を阻害することが知られており、UV照射により生産が促進される二次代謝物は、生育阻害に対する防御機構により生産されると考えられている。明期におけるUV照射による生育阻害は、UV強度一定の場合、光合成有効放射が少ない条件下で大となることが報告されているため、暗期では明期よりも少ないUV照射量で二次代謝物生産が促進される可能性がある。しかし、暗期におけるUV照射の効果については明らかとなっていない。本年度は、葉を薬用とするニホンハッカと、根を薬用とするウラルカンゾウを人工環境下で栽培し、それらの地上部に強度を3段階に変えたUV-AまたはBを4~10日間、暗期中12時間照射した。その結果、ニホンハッカの葉のメントール、メントンおよびリモネン濃度は、UV-AまたはBを4日間照射することで、ウラルカンゾウの根のグリチルリチン、リキリチン、リキリチゲニンおよびイソリキリチゲニン濃度は、UV-Bを10日間照射することで、UV無照射区よりも高くなる傾向がみられた。本研究ではさらに、効率的に薬用成分濃度を高める照射部位の検討や暗期と明期におけるUV照射の効果の比較を行い、実用的なUV照射方法を提案した。
2: おおむね順調に進展している
昨年度は予定していた品種の入手に時間がかかり、やや予定より研究が遅れたが、今年度は選定した品種が安定して増殖でき、試験に必要な個体数を十分確保できたため、予定通り試験を実施することができた。また、これらの品種を用いて「薬用植物の目的部位の成長および高濃度化に適した環境要因の解明」を予定通り実施できた。一時、数種の分析機器の修理が必要となったが、予定の分析を終了することができた。
次年度も引き続き「薬用植物の目的部位の成長および高濃度化に適した環境要因の解明」を実施する。薬用成分の蓄積量は、部位の若い時期~成熟期~老化期で最大となる時期が植物種や目的成分によって異なるため、その発現・蓄積の解析から最適な採取時期を決定する。特に、多年草のカンゾウについては、薬用部位である根の成長速度が個体によりばらつくため、精度の高い分析を行うためには、同じ個体を環境制御(高濃度処理)の前後で分析できる方法を開発する必要がある。次年度では分析部位の適切な採取方法を明らかにする。また、UV光の局部照射に加え、他の環境制御処理を実施し、薬用成分の分析をHPLCやHPLC/MS/MSなどを駆使して行う予定である。
分析に使用する輸入試薬が為替の影響で昨年度までの価格より安価に購入できたため。分析精度を次年度以降も維持するため、分析に用いるHPLCのカラムなどを購入し、更新する予定。
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Environmental Control in Biology
巻: 51 ページ: 149-155
10.2525/ecb.51.149