畜産廃水に残留する動物用抗菌剤の除去法として永久磁石を用いた磁気分離法について検討を行った。主な検討課題は,動物用抗菌剤(抗生物質)への磁気シーディング法(磁性付与)と永久磁石を用いた高勾配磁気分離装置の2点である。 本研究で検討した動物用抗菌剤の磁気シーディング法は,電気化学反応プロセスと磁性ビーズ添加の2段階で構成されている。多くの抗生物質が金属イオンと選択的に結合する性質を持つことから,鉄電極を用いた電気化学凝集法によって鉄イオンを溶出させた後,磁性ビーズを添加することによって,抗生物質に磁性を付与する方法である。電気化学凝集法を用いて鉄イオンの溶出量等を制御することによって,抗生物質の除去率向上が可能であることを明らかにした。また,添加する磁性ビーズについても検討し,界面活性剤を用いてコーティングさせた磁気ビーズが,粒子径,分散性そして経済性といった点から,抗生物質の磁気分離に適していることを明らかにした。 畜産施設で設置可能な小型の磁気分離装置についても検討を行った。市販のマグネットバーを用いた装置では磁場強度が不足していた。そこで,ネオジム磁石による磁気回路を組み込んだ磁気分離装置を用いて,強磁性粒子の分離試験の評価を行った。SUS440Cステンレス球を磁気フィルタを用いることによって磁場勾配が拡大し,磁性粒子の除去率が大幅に向上した。永久磁石による磁場空間においても,適切な磁気フィルタを選択すれば廃水処理を目的とした高勾配磁気分離が実現可能であることが示唆された。 これらの知見は,畜産施設のような排出源におけるオンサイトでの抗生物質磁気分離に寄与するものと考えられる。
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