研究課題/領域番号 |
24580370
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
谷野 章 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (70292670)
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キーワード | 再生可能エネルギー / 太陽光発電 / 太陽電池 / 温室 / 園芸施設 |
研究概要 |
1)改良大型シースルー太陽電池モジュールの試作とガラス温室への装着および発電量と遮光量の計測 平成24年度の研究で得られた小型太陽電池モジュールの実測データおよびシミュレーション結果を根拠として適切なセル密度を決定し,ガラス温室のガラス1枚分に相当する910 × 610 mmの大型シースルー太陽電池モジュールを直径1.2 mmの球状シリコン太陽電池セル4800粒を使用して試作した.このモジュールを島根大学敷地内の南北棟ガラス温室西屋根面にはめ込み,発電量および遮光量を計測した.屋根の傾斜は26.5度,地上高は3 mである.電流-電圧特性は直流電圧・電流源/モニタで計測した.水平面全天日射をガラス温室天頂に設置した日射センサーで計測した.傾斜面全天日射,傾斜面アルベド日射,太陽電池モジュールのセルの影部分の傾斜面全天日射,および太陽電池モジュールのガラス部分を通過した傾斜面全天日射を,それぞれ日射センサーで計測した.直流電圧・電流源/モニタおよび各日射センサーの計測値はGPIB経由で一分毎に同期してパソコンに蓄積した. 2)実測値に基づく計算式の補正 平成24年度に導出した計算式と改良大型シースルー太陽電池モジュールの実測値を比較して,計算式の補正を行った.しかしながら,実測値に説明困難な誤差があり,この原因を調べたところ,熱電対式日射センサーの応答速度が遅いことが問題であることがわかった.平成26年度の実験では応答速度の速いフォトダイオードタイプの日射センサーを使用してデータを収集する. 3)研究成果を関連学会で発表した.さらに,2年間の研究成果を取り纏めて学術雑誌に投稿した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)改良大型シースルー太陽電池モジュールの試作とガラス温室への装着および発電量と遮光量の計測 平成24年度の研究で得られた小型太陽電池モジュールの実測データおよびシミュレーション結果を根拠として適切なセル密度を決定し,ガラス温室のガラス1枚分に相当する910 × 610 mmの大型シースルー太陽電池モジュールを直径1.2 mmの球状シリコン太陽電池セル4800粒を使用して1枚試作した.太陽電池セル1粒とモジュールサイズにはほぼ1000倍のスケールの違いがあり,微細加工を大量に高精度で実施するために,製造時間およびコストが大幅に上昇した.このため,当初申請書では同じモジュールを2枚作製する予定であったが,1枚の作成に留めた.日射センサーの配置の工夫によって,1枚のモジュールでも支障なく実験を実施できた.このモジュールを島根大学敷地内のガラス温室西屋根面にはめ込み,実際のガラス温室で発電量および遮光量を計測した. 2)実測値に基づく計算式の補正 平成24年度に導出した計算式と改良大型シースルー太陽電池モジュールの実測値を比較して計算式の補正を行った.しかしながら,実測値に説明困難な誤差があり,この原因を調べたところ,熱電対式日射センサーの応答速度が遅いことが問題であることがわかった.平成26年度の実験では応答速度の速いフォトダイオードタイプの日射センサーを使用してデータを収集する. 2年目までに得られた成果を取り纏め,国内外の学会で発表した.さらに学術誌に投稿した.以上の研究実績は,ほぼ申請書作成時点の計画通りである.
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今後の研究の推進方策 |
1)改良大型シースルー太陽電池モジュールの発電量と遮光量の計測 大型シースルー太陽電池モジュールは平成25年秋に完成したため,秋の晴天日数日間の,しかも限定的な時間分のデータしかない.これは,晩秋から春までの間,めったに太陽が出ることがないという山陰地域の気候に原因がある.したがって,平成26年度は春から秋までの長期にわたる太陽電池の発電量および遮光の実測データをガラス温室で得る. 2)実測値に基づく計算式の補正 平成25年度までに導出した計算式と,平成26年度に得る改良大型シースルー太陽電池モジュールの実測値を比較して計算式の補正を行う.具体的には,日射の大気透過率およびガラス透過率,直達光のモジュールへの入射角度特性,アルベドなどが主な補正係数になる. 3)実規模ガラス温室への計算の拡張 温室全体または特定の面にシースルー太陽電池モジュールを設置したと仮定し,発電量と遮光量の瞬時および年間積算値を計算する.この時,温室の形状,向き,立地緯度をパラメータとする.温室の冷暖房機,ポンプ,ファン,照明などの負荷を1日あたり何時間運転できるかという実例も示す. 得られた成果を順次国内外の学会で発表するとともに,学術誌に投稿する.
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次年度の研究費の使用計画 |
国民に広く研究成果を発信するという科学研究費助成事業の趣旨に則り,平成25年9月に投稿した論文が受理された場合,オープンアクセスとして,全国民が本研究の成果を閲覧,利用可能とするつもりであった.このために平成25年度研究費として税抜2500米ドルを確保していたが,査読に予想以上の月日を要し,平成25年度中に受理されなかったため,結果的にこの費用は平成26年度に繰り越した.また,この論文で作成した図のデータは,莫大な情報量を有していたため,白黒では表現できず,カラーを使用した.このため印刷媒体における高額なカラーページチャージ(20万円程度)の費用も平成25年度費用で確保していたが,同じ理由でこの費用も平成26年度に持ち越した.冬季に太陽がほとんど出なかったため,屋外実験の部材類の購入が進まず,平成26年度に持ち越した. 平成26年4月1日に上記投稿論文は受理されたので,平成26年度に繰り越した費用を予定通りこれに充てる.平成26年度に研究成果を国際学会(オーストラリア)および国内学会(東京)で発表するために,大きな支出が見込まれるが,計画通り平成26年度交付予定額で賄うことができる.平成26年度は装置の改善およびデータ解析用コンピュータの補充を行い,研究を加速させる.
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