直径1.8 mmの球状シリコン結晶太陽電池(PV)セルを用いて試作した97 cm2のシースルーPVモジュールの特性評価試験を実施した。このPVセルはp型半導体の内球とn型半導体の外殻から構成され,それぞれに接触する電極から電力を取り出す構造である。このPVモジュールは全方位からの入射光で発電するので,温室屋根面への装着を考えたとき,天空からの日射と地面や作物で反射した日射の両方を発電に利用できるという大きなメリットがある。このPVセルは可視光~近赤外で発電するため,地面や植物で反射した後の長波長寄りの光も有効に電力に変換する。試作PVモジュールを用いて自然光下で発電実験を行い,測定値を計算値と比較した。実験データおよびシミュレーション結果を根拠として,適切なセル密度を決定し,直径1.2 mmの球状シリコンPVセルを4800粒使用してガラス温室のガラス1枚分に相当する910 × 610 mmの大型シースルーPVモジュールを試作した。このモジュールを島根大学敷地内の南北棟ガラス温室西屋根面にはめ込み,発電量および遮光量を計測した。電流-電圧特性を直流電圧・電流源/モニタにより計測した。水平面全天日射をガラス温室天頂に設置した日射センサーで計測した。傾斜面全天日射,傾斜面地上散乱日射,PVモジュールのセルの影部分の傾斜面全天日射,およびPVモジュールのガラス部分を通過した傾斜面全天日射を,それぞれ日射センサーで測定した。温室全体または特定の面にシースルーモジュールを拡張したと仮定し,発電量と遮光量の瞬時および年間積算値を計算した。この時,温室の形状,向き,立地緯度をパラメータとした。どの程度の規模の温室の冷暖房機,ポンプ,ファン,照明などの負荷を運転できるかという実例も示した。得られた成果を関連学会および学術誌で発表した。
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