研究課題/領域番号 |
24580374
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
遠藤 良輔 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (10409146)
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キーワード | バイオマス利用 / メタン発酵 / 接ぎ木 |
研究概要 |
メタン発酵消化液は植物に必要な栄養素を多く含むが,養液栽培の培養液として用いると,液中の高濃度のアンモニアや高いpHが植物による養分吸収の阻害要因となりうる。異なる植物体をつなぎ合わせる接ぎ木は,台木の根部が有する病害耐性や高い栄養吸収能力を利用して穂木の生産性を向上させる技術であることから,消化液を利用した養液栽培時の植物における養分吸収が接ぎ木により改善できる可能性がある。さらに,メタン発酵消化液中のアンモニアを硝酸に転換して,アンモニア濃度およびpHを低下させることも養分吸収の改善に有効であると考えられる。そこで,①穂木用キュウリと台木用カボチャ5品種による消化液を用いた養液栽培実験および②亜硝酸細菌および硝酸細菌によるメタン発酵消化液の連続生物酸化実験を行い,養分吸収改善への有効性について調べた。栽培実験では,消化液区の乾物重は化学肥料を使用した区に比べていずれの品種でも減少したが,その減少率は消化液区における発根数が多く根乾物重が大きいときに小さい傾向が見られた。生物酸化実験では,アンモニアの硝酸転換に伴い消化液中のアンモニア濃度が減少しpHが低下した。この改質消化液を用いたキュウリ養液栽培では,植物の生育が劇的に改善した。これより,台木選別および消化液改質の双方において,消化液を用いた養液栽培での植物の養分吸収能力の改善に寄与しうることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H25年度において,消化液の特性を解析して根圏環境を改善することを計画し,計画以上に消化液の改質処理が成功裏に行われた。一方,接ぎ木実験においては,接ぎ木による穂木の生育改善メカニズムに不明な点が多いため,いくつかの基礎実験を続けて,接ぎ木と養分吸収能力の関係性を明確にする必要があると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
接ぎ木を介して植物に養分吸収能力を付与することを当初の目的としていた本研究であったが,生物酸化を介して消化液の性状を養分吸収に適したものに改質するというテーマも派生的に加わり,植物と消化液の双方を養分吸収向上のために歩み寄らせる研究形態に発展しつつある。今後も,消化液適用時の植物の生理学・形態学的変化を解析することで,接ぎ木と消化液改質の相乗効果について検証する。最終的に,廃棄物利用技術であるメタン発酵の消化液から植物への養分再回収量も分析し,本研究の資源循環における貢献度についても評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品の一部が繰り返しの実験に耐えるものであったこと,人件費が発生せずに実験を遂行できたことから次年度使用額が生じた。 繰り越した研究費は物品代および成果発表のための旅費として計上する。その他は申請書の計画通りの使用とする。
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