研究実績の概要 |
農業残さでは、品目、発生時期などで、構成する成分(元素組成)が異なるため、発熱量、灰分、灰の溶融温度の熱的特性が異なる。利用の際にはあらかじめ知ることが、燃焼炉の選択あるいは制御に必要である。そのため、発熱量、灰分、溶融温度を簡便迅速に推定する技術の開発を目指し、蛍光X線分析を用いた元素分析から熱的性質を求めるシステムを検討した。前年に引き続き発熱量、灰分、溶融温度について、さまざまな残さを収集してデータを蓄積した。 蛍光X線分析では、FP法で得られる元素組成の差分をこれまでセルロースとして処理し、灰分、発熱量の推定を行ってきた。試料の調製や灰分については比較的安定して実測値に近い値を得られるようになった。発熱量に関しては、アシやススキなどの立ち枯れした植物残さで実測値に近い値を得ることができたが、収穫直後の稲わら、広葉雑草、堆肥などでは、誤差が大きくなる結果となった。軽元素の内訳についての推定方法に課題があることが分かり、新たな分析手法との組み合わせを検討することとした。灰溶融温度については、アルカリ度など多くの手法が提案されているが、草本ではK/Ca+Mgの値が傾向をよく表していた。測定手法を各種比較した結果、灰分測定皿で加熱した後に、目視と実体顕微鏡により、4段階に判定する、M.Ohmanらの方法で溶融程度を示したのちに、その結果をSASによりロジスティック回帰分析することで、溶融温度の目安を表す式を示すことができた。蛍光X線分析から溶融温度を推定する式の説明変数(K,Ca,Mg)をそろえることができた。
|