研究課題/領域番号 |
24580378
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
海津 裕 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (70313070)
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研究分担者 |
山田 浩之 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (10374620)
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キーワード | 水質プロファイル / 自律航行 / 省力化 / 無人ロボット |
研究概要 |
本年度は昨年開発を行った,ロボットボートを実際の湖沼で使用し,その有用性について評価を行った。また,水質測定用のウインチシステムを実装し,そのテストを行った。北海道の阿寒湖のマリモ生息地であるチュウルイ湾において,サイドスキャンソナーを用いた計測実験を行った。この場所は,電線が通っていないため,1日の実験を全て,バッテリーによって行わなければならない。そのため,あらかじめ,全ての電子機器に対してバッテリーの容量をチェックし,8時間の連続稼働が可能なことを確認した。幅約,500mの湾を横切るように15mおきに直線のパスを設定し,自動航行を行った。2時間連続航行を行った。合計距離は6.9kmとこれまでで最も長い距離だった。その結果,秒速は平均で0.91m/sとなった。これは,同じコースを人がエンジン付きのボートで行ったときの0.61m/sと比較して,1.5倍の効率となった。また,コースに対する横方向偏差のRMSEは,0.73mとソナー計測を行うためには十分な精度だった。また,コースに対するヘディングのRMSEは,10.4°であった。これは,今後,制御方法や,船体の構造の改良により改善していく必要があると考えられる。 プロペラの駆動に使用したリチウムイオンバッテリーは,十分な容量を持ち,電圧の変化が少ないことが確認された。 水質測定センサーに関しては,水質センサーとコントローラ,制御用小形PCを防水加工を施したアクリルパイプに格納するシステムを開発した。また,ボートからの指令によってセンサーの測定水深を変えられるように,ステッピングモータを用いたウインチシステムを開発した。これにより水質の3次元分布を計測できるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ロボットボート本体および,水質センサ,ソナー計測システムについては,ほぼ完成しており,一日8時間程度の稼働が可能である。しかし,レーザースキャナを用いた障害物回避およびマッピングシステムについては,ソフトウェアの開発が遅れており,実装には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後進めるべき点は,レーザースキャナによる障害物回避と,自動マッピング機能をロボットに実装することである。あらかじめ決められたパス上であっても,障害物があれば,それを回避し,その位置をマッピングできる機能を追加する。そのため,比較的小さな池で実験を行い,プログラムを完成させる。また,これまでは,バッテリーを節約するため,できるだけ,出力を抑える方策をとってきた。しかし,実際の測定時には,突然の強風によりコースを大きく外れる状況がある。そこで,プロペラの出力と,船体の挙動から,風や流れの状況をリアルタイムで状態推定し,推進力を一時的に増加させるアルゴリズムを実装する。そして,できるだけ船体が横に流れることを防止するため,ボート中心にキールを設置する。これにより,より確実に航行を行うことができると考えられる。 ウインチシステムの開発の遅れにより水質観測が遅れていたが,昨年度完成したため,今後はこれを用いて観測を行うことが可能となった。最近の水質変化で問題となっている北海道東部のオンネトーを対象として水質分布調査を実施する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の実験は主に夏に行われた。しかし,秋以降,実験機材の改良を行った結果研究費が不足した。そのため,前倒し請求を行った。その後,本年度に関しては,これ以上の改良は必要無いと判断し,次年度使用額が生じた。 物品費として使用する。
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