研究課題/領域番号 |
24580379
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
庄野 浩資 岩手大学, 農学部, 准教授 (90235721)
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キーワード | 生物検定 / 水ストレス / 温度ストレス / 塩害 / 環境応答 |
研究概要 |
前年度試作した温度・水ポテンシャル勾配の実現装置には,冷熱源,温熱源の温度制御能力に問題があり,供試材料の葉温,特に室温の影響を強く受け,所望する温度勾配が実現できない,あるいは不安定となるなどの問題が認められた。本年度の最大の成果は,本装置を全面的に作り直した点にある。具体的には,高精度アルミブロック恒温槽2台を導入し,それらを並列にならべ,一方を低温,残りを高温に設定する。同恒温槽の温度制御は高精度かつ安定であるため,両者によって極めて高精度な冷熱源,および高熱源が実現できる。さらに,両者の間に伝熱体として金属(銅・アルミ)の橋を渡すことで,同伝熱体上に均質な温度勾配が安定的に実現できる。同温度勾配の高精度・安定化は本研究を推進する上で極めて重要である。さらに昨年度までは,植物材料を準備するために屋外栽培などによって育成・栽培する必要があり,天候の影響などで安定して同材料を確保できない問題があった。このため,本年度は中型の人工気象器(容量:240L)を導入した。同器では,インゲンマメなどの植物を一定の葉数まで定期的に育成することが可能であるため,実験に必要な植物材料が安定的に確保できる環境が確保できた。以上の様に本年度は実験装置の改良と植物材料の育成環境の整備を中心とした研究環境のステップアップが中心となった。一方,昨年度得られた各種実験結果の解析は十分進んでいなかったため,上記の作業と並行してさらなる解析を実行した。その結果,温度と水ポテンシャルの2つの環境変動に対する主要なJIPパラメータの大半は,温度変動に対して敏感に反応する一方,水ポテンシャル変動に対しては,一部のパラメータが反応するに過ぎないことが分かった。これは両環境に対する光化学系IIの反応速度の違いを示している。したがって,今後の実験では各環境の処理時間をそれぞれ別々に最適化することが必要と認められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度,インゲンマメに指標作物として十分な適性があることが判明したため,本研究ではインゲンマメを主な植物材料として実験に供試することとしたが,その安定的な育成には課題があった。そこで本年度はその育成環境を整備したため,育成状況の影響を受けずに実験を行うことが可能となった。また,前年度試作した装置に認められた種々の問題に対応して,今年度,あらたに高精度な装置を実現した。このため,今後は生育阻害物質の影響の検出性能の検討など,より実践的な検討を高精度かつ安定的に実行可能な環境が整うなどの進展があった。 以上の状況から,おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,測定装置の改良と植物材料の育成環境の整備など研究環境のステップアップ作業が中心となった。このため,次年度以降は,インゲンマメを指標作物として,塩害など各種環境ストレスの判定が可能かどうかを検討する。また,初年度の結果の解析から,水ポテンシャル変動に対する光化学系IIの反応速度が,温度変動に比べて格段に遅いことが示唆された。このため,これまでは,装置の構造上,水ポテンシャルと温度の処理時間を同一としていたが,今後は,水ポテンシャルの処理時間をさらに延長する必要がある。現状の装置で各環境の処理時間を別々に設定するためには,処理の与え方を最初から考え直す必要があるため,今後はこの点に注意しつつ研究を進める。
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