本研究の目的は,葉1枚でも測定可能な植物の温度・水環境変動に対する2元的環境応答簡易測定法の開発である。今回,種々の方法を検討した結果,温度環境変動は、恒温槽アルミブロックに試料を接触させ温度を段階的に変動させる方法,また水環境変動は,浸透ポテンシャルの異なるポリエチレングリコール6000水溶液に試料を12時間以上水浸させる方法がそれぞれ最も効率的に実現可能であることを確認した。さらに次の段階として,温度・水環境の両変動に的確に反応する光合成活性を策定するため,OJIP測定指標とクエンティング測定指標の両環境に対する感度を検討した。その結果,OJIP測定指標は温度環境には敏感ながら水環境に対する感度が低いことが判明したため,本研究ではクエンティング測定指標を採用した。使用した測定指標は,暗順応下ではFv/Fm,明順応下ではFv’/Fm’,ΦPSⅡ,qP,qN,NPQ,Rfd等である。 供試材料はインゲンマメの未熟初生葉(young)と成熟初生葉(mature)とした。実験結果から,温度と水環境に対するNPQの応答を各環境毎に一元的に見た場合,youngの応答が常により高く,各環境に対する防御機能が未熟であることは見て取れたが,両環境がどの様に相互に影響しあっているかまでは読み取ることは困難であった。しかし,両環境に対するNPQの応答を2元的にグラフ化すると,個別に見られた温度・水環境の変動への反応の違いがより明確になっただけでなく,両環境の相互作用の状況が,youngとmatureで明確に異なる事実が明瞭に確認できた。この様な相互作用の状況の確認は1元的環境応答からは決して実現できず,本測定法独自の特徴と言える。 以上から,温度・水環境を2元的に変動させることで生育状態の違いが明確に浮き上がること,すなわち本測定法が生育状態を把握する上で非常に有用であることが示された。
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