研究課題/領域番号 |
24580382
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
林 茂彦 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物系特定産業技術研究支援センター園芸工学研究部, 主任研究員 (80391530)
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研究分担者 |
山本 聡史 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物系特定産業技術研究支援センター園芸工学研究部, 主任研究員 (20391526)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
本年度は、栽培ベッドの横移送装置を用いて、イチゴのポット苗および群落(栽培ベッド)を3次元センサで撮影し、生育情報を推測する画像処理手法を開発した。 まず、イチゴのポット苗を25株(「あまおとめ」15株、「さがほのか」10株、平均葉数6.5枚)供試し、3次元センサ(Microsoft、Kinectセンサ)をポット上面から0.8mの高さに設置して草高および苗の最大幅を推測し、実測値と比較した。その結果、草高の推測に関しては、実測値との相関(決定係数0.96)が高く、近似直線の傾きも0.90であった。一方、苗の最大幅の推測では、決定係数が0.83、近似直線の傾きが0.81で、草高の推測と比較してばらつきが見られた。 次に、3次元センサから得られた葉の表面の測定点から三角形のポリゴンの面積を積算することにより葉面積を推測した。3枚の小葉からなるイチゴの葉(「さがほのか」92枚)を供試し、スキャナで計測した実測値と比較した。またポット苗(「さがほのか」51株、平均葉数6.1枚)を供試し、1株当たりの葉面積の推測値と実測値とを比較した。その結果、葉面積の推測では、実測値と相関はあるものの、近似直線の傾きが葉1枚で0.62、ポット苗で0.47となり、実測値と比較して小さかった。誤差要因として、葉の重なりやカールした形状、カメラの校正精度などが考えられた。 さらに、栽培ベッドの横移送装置に3次元センサと照明を設置するとともに、駆動モータをステッピングモータに変更することにより、高精度な位置決めが可能なイチゴ群落計測システムを試作した。長さ1 mの栽培ベッドを80 mmずつ動かしてイチゴ群落(10株)の画像13枚を撮影し、ステッピングモータの位置情報に基づき各画像の3次元情報をつなぎ合わせることにより、ほぼ連続したイチゴ群落の3次元情報を構築し、群落の状態を可視化できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イチゴ群落の3次元空間における幾何学的特徴量の計測に関して、3次元センサを用いて苗の草高、幅および葉面積を計測するアルゴリズムを考案するとともに、ステッピングモータを用いてイチゴの栽培ベッドの高精度な位置決めを行い、栽培ベッド1台分の画像を合成するイチゴ群落計測システムを試作した。これと平行して3次元センサを用いて葉の傾きを推測するアルゴリズム、葉の重なりを分離して葉数を推定するアルゴリズムの開発を試みたが、実測値との相関が低く十分な精度が得られず、問題点の整理に時間を要した。今後アルゴリズムの再構築、または高精度3次元カメラの利用(TOFカメラなど)の再検討の必要性が認められた。 カラー画像情報を基にした、葉色の空間的および経時的変化の計測に関して、新葉の分光反射特性を考慮した検出方法を考案し、新葉の定期的な出蕾を検出することにより苗の健全性を判別する試みを行ったが、詳細な解析まで至っていない。 イチゴ群落の赤熟果実と未熟果の計数に関して、イチゴ栽培ベッドの下方から撮影した静止画像から赤熟果実と未熟果を認識するアルゴリズムを考案した。また、このマシンビジョンを試作したイチゴ群落計測システムに追加する作業を進めている。これにより、栽培ベッド1台分の画像を合成した後、果実を抽出して計数できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
2012年度の進捗状況を踏まえ、残り2年間の研究期間で以下のように本研究を推進する。 まず、2012年度に試作したイチゴ群落計測システムにおいて、長さ1mの栽培ベッドに定植したイチゴ群落を供試し、草高、幅、体積などの幾何学的特徴量の測定精度を明らかにする。また、生育の重要な指標のひとつである葉枚数を3次元画像処理によりカウントするアルゴリズムを考案し、ポット苗を用いた精度試験を行う。さらに、カラー画像情報を基に定期的な新葉の検出による苗の健全性を判別する手法の開発を進めるとともに、イチゴ群落の赤熟果実と未熟果の数の推定精度を明らかにする。 次に、RFID等を利用して栽培ベッドに取りつけたICタグにイチゴ群落の幾何学的特徴量、新葉の有無、未熟果および赤熟果の数などの生育情報を逐次記録することにより、栽培ベッドごとの生育状況や生育情報の経時変化などを参照できる生育情報管理システムの構築を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、前年度までに試作したイチゴ群落計測システムの改良を進め、現有画像センサを用いたソフトウェアの開発とその精度検証に注力したため、次年度使用助成金が発生した。 次年度はイチゴ群落計測システムのハードウェアとして、新葉の検出に必要な緑色のLED照明及び鏡面反射光を除去する偏光フィルタなどを購入する。現在使用している3次元センサ(Kinectセンサ)の光環境に対するロバスト性を向上させるため、近赤外線用の偏光フィルタを購入する。また必要に応じて、入力環境へのロバスト性が高いTOFカメラの購入を検討する。 ソフトウェアでは、Kinectセンサを40cm程度までの近距離で撮影可能にするため、イチゴ群落計測システムで使用しているパソコンのOSをWindows 7以降のバージョンに更新する。試験のための苗購入や肥料代など栽培に係る諸費用に使用する。 これまで試作したイチゴ群落計測システムについて、海外の国際会議(Greensys2013、IFAC Agricontrol2013)にて発表するための学会参加費および旅費として使用する。また、論文投稿する際の投稿料、別刷り料金などの諸費用に使用する。
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