研究課題/領域番号 |
24580382
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
林 茂彦 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物系特定産業技術研究支援センター園芸工学研究部, 主任研究員 (80391530)
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研究分担者 |
山本 聡史 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物系特定産業技術研究支援センター園芸工学研究部, 主任研究員 (20391526)
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キーワード | 生育計測 / センシング / イチゴ |
研究概要 |
移動栽培ベッドの横移送において、一定速度で移動させながらイチゴ群落および果実情報を取得し、栽培ベッドごとの情報を自動管理できるように計測システムを改良するとともに、イチゴ群落の草高と幅および果実数を推測する画像処理手法を開発し、精度を評価した。 まず、改良した計測システムは、上方から3次元センサ(Kinectセンサ)でイチゴ群落、下方からRGBカメラおよびTOFセンサで果実計数を行うための画像を取得する。画像は、横移送速度16mm/sで栽培ベッドを移動させながらラインスキャンカメラのように合成され、1台の栽培ベッドの全体画像として取得される。また、栽培ベッドごとのIDを書き込んだRFIDタグを栽培ベッド側面に取り付け、取得した生育情報を該当する栽培ベッド番号と関連付けるシステムを付加した。 次に、イチゴ「あまおとめ」を8~12株定植した長さ1mの栽培ベッド10台(草高の最大値は27~39cm、幅の最大値は61~83cm)を供試し、イチゴ群落の3D再構築を行い、草高および幅を推定し、実測値と比較した。その結果、任意の断面におけるイチゴ株の草高と幅が推測でき、距離情報に基づき葉領域のカラー情報が得られた。推定誤差は草高で平均1.6cm(最大3.4cm)であり、幅で平均3.7cm(最大6.6cm)であった。 さらに、赤熟果および未熟果を検出し、計数するための画像処理手法を検討した。色画像のみを用いるRGB処理手法、色画像と距離画像を用いたRGB処理およびTOF+RGB処理の2つの画像処理方法を考案し、「あまおとめ」を定植した栽培ベッドの画像20枚に対して処理を行い、計数精度を比較した。その結果、検出成功率は、距離情報による果実の重なり判別アルゴリズムなどを付加したTOF+RGB処理の方がRGB処理よりも高く、赤熟果で94.3%、未熟果で78.7%であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イチゴ群落の3次元空間における幾何学的特徴量の計測に関して、3次元センサを用いて株の草高、幅を計測するアルゴリズムを考案し、推定精度を評価することができた。また、緑色の照明を用いて新葉を検出する手法を考案した。これらの手法を用いることにより苗の健全性を評価する見込みが得られた。 イチゴ果実に関する情報として、計測システムで取得した栽培ベッドごとの画像において、果実を計数する画像処理アルゴリズムを考案し、計数精度試験を行ったところ、赤熟果では高精度に計数が可能であった。しかし、未熟果では計数精度の向上が必要であると考えられた。また、計数精度試験を行った時期が5月であったこともあり、株当たりの果実数が少なかったため、果実数の多い1月から3月にも計数精度試験を行う必要がある。さらに、計数のために検出したイチゴ果実の大きさ(直径)を推定する画像処理アルゴリズムを考案し、ピンポン玉や模型果実を用いて推定を行ったところ高い精度が得られた。今後、栽培ベッドに植えられた実際の果実を使って精度試験を行う予定である。 また、RFIDを利用して栽培ベッドを個別認識し、生育情報を自動管理するシステムを構築し、精度試験時等に読み取り試験を行っている。9月の定植時に栽培ベッドにRFIDタグを取付け、6か月経過した3月においても問題なく読み取り可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度の進捗状況を踏まえ、残り1年間の研究期間で以下のように本研究を推進する。 まず、2013年度に改良した計測システムにおいて、イチゴ群落の3次元情報を定植直後から数ヶ月間定期的に取得し、生育の経時変化の検出可能性を明らかにする。具体的には、草高と幅の推測値と実測値とを比較し、測定精度を評価するとともに、イチゴ群落の生育の経時変化を容易に視認可能な解析手法を明らかにする。 次に、イチゴの未熟果実の計数精度を高める手法を検討するとともに、果実数の多い時期に計数精度を評価する。また、生育の重要な指標のひとつであるイチゴ果実の大きさを推定する手法を検討し、測定精度を評価するとともに、果実の3次元位置を取得する方法について検討する。 さらに、RFIDを利用した生育情報管理システムにおける読み取り試験を継続して行い、耐久性を確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
イチゴ群落センシングシステムに関する成果の公表および情報収集のため、旅費に多く支出した。今年度は、Kinectセンサを利用した制御プログラムおよびイチゴ果実計数プログラムの開発に注力したため物品費の支出は少なかった。 これまでの研究でセンシングの基本部分がほぼ確立したため、次年度はシステムの統合を行うために、予算を繰り越して使用する予定である。 現在、イチゴ群落の計測に使用しているKinectセンサは、距離情報取得方法がアクティブステレオ法であるため、解像度が低く、果実情報を取得することが困難であった。そこで、TOF方式の距離センサを採用したKinectセンサv2を購入し、より安価な計測システムを構築するための基礎試験を行う。同時に、OSをKinectセンサv2に対応するWindows8に更新する。また、計測システムの横移送装置を改良するためのアルミフレームやRFIDシステムを収納する制御盤等を購入する。その他、試験のための苗購入や肥料代など栽培に係る諸費用に使用する。
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