研究課題/領域番号 |
24580386
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
大久保 武 茨城大学, 農学部, 教授 (70233070)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | レプチン / 細胞内情報伝達 |
研究概要 |
転写因子STAT3の核移行を指標としたリアルタイムレプチン活性測定法により、ニワトリ血清および肝臓、卵黄、脂肪抽出液中のレプチン様活性の評価を行った。ニワトリ血清を処理した細胞では、処理後の時間経過に伴いGFP融合STAT3の核への移動が増加したことから、ニワトリ血清中にレプチン様活性を持つ分子が存在することが強く示唆された。しかしながら、血清以外の組織抽出液にはそのようなレプチン様活性を見出すことができなかった。さらに、ウズラ、ハシブトガラス、ハシボソガラスの血清中のレプチン様活性を調査し、ウズラ血清処理ではSTAT3の核移行は観察されなかったが、ハシブトガラスとハシボソガラスの血清処理では、ニワトリ血清処理よりも高頻度なSTAT3の核移行が認められ、特にオスよりもメスカラス血清の方が、より強いレプチン様活性を示す傾向があった。またウエスタンブロット解析により、レプチン様活性が認められた血清は、レプチン受容体発現細胞内のSTAT3をリン酸化させるのに対し、レプチン受容体非発現細胞内のSTAT3リン酸化を誘導しないことを示し、その反応がレプチン受容体を介した特異的な反応であることを証明した。 限外濾過法によるニワトリ血清の粗分画画分に対するレプチン様活性の評価を行い、レプチン様活性を持つ物質は血液中では分子量10万以上の分子として存在することを明らかにした。既知のレプチンの分子量は約16,000と推定されているため、血液中では結合タンパク質等に結合して循環していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
鳥類では、これまでに生体成分中のレプチン様活性を検出した例は無く、本研究の成果が世界で初めてである。またそのレプチン様活性が、家禽のみならず野鳥にも見出された点は今後の研究の進展に大いに役立つと考えられる。しかしながら、本研究ではレプチン様タンパク質の合成器官の特定ができなかったため当初予定していた部分アミノ酸配列の決定等には至らなかったが、限外濾過によるニワトリ血清の粗分画により、レプチン様分子の濃縮が可能になったことから、次年度以降は血清からのレプチン様分子の単離を含め、本研究の目的達成に向けた研究が進展できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
リアルタイムレプチン活性測定法を用いてレプチン様分子の産生器官の特定を引き続き目指す。またあわせて、ニワトリ血清中では分子量10万以上の画分にレプチン様活性を持つ分子が存在することを明らかにできたため、限外濾過法により高度に濃縮した試料を用いてレプチン様分子の単離を進めていく。レプチン様分子の精製は、当初イオン交換クロマトグラフィーにて行うことを予定していたが、血液中では結合タンパク質とともに複合体を形成していることから、受容体抗体を用いた免疫沈降と組換え型レプチン受容体を用いたアフィニティー精製を用いることで、より簡便にレプチン様分子の単離を行い、以降の遺伝子単離へとつなげていくことを予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
レプチン様タンパク質の単離に使用する血清の濃縮に必要な限外濾過フィルターなどの消耗品及びアフィニティークロマトグラフィーによる精製の予備検討のための試薬類の購入に充てる。
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