研究課題/領域番号 |
24580386
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
大久保 武 茨城大学, 農学部, 教授 (70233070)
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キーワード | レプチン / 鳥類 / クローニング |
研究概要 |
比較ゲノム解析により、ハヤブサゲノム中にレプチン遺伝子が存在することを見いだした。また推定ハヤブサレプチンとレプチン受容体との相互作用についてシミュレーション解析を実施し、推定ハヤブサレプチンは、ニワトリレプチン受容体と高い親和性を持って結合しうることを確認した。さらに、大腸菌で発現させた組換え型ハヤブサレプチンは、哺乳類細胞で発現させたニワトリレプチン受容体を通じて、サイトカイン受容体の主要な細胞内情報伝達経路であるJAK-STAT経路を活性化させることをルシフェラーゼアッセイにより明らかにした。本研究結果は、これまで不明であった真の鳥類レプチンの存在を明らかにした最初に明らかにした論文としてPLos One誌に掲載された。 ニワトリ下垂体にレプチン受容体タンパク質が存在することを確認した。そこで、レプチンの下垂体への作用を明らかにする目的で、ニワトリレプチン受容体安定発現細胞株を用いてニワトリ下垂体ホルモン遺伝子の転写に及ぼすレプチンの効果について検討した。その結果、レプチンは転写因子Pit-1存在下でニワトリ成長ホルモン遺伝子の転写を上昇させることを確認した。さらに、レプチンによる成長ホルモン遺伝子の転写誘導はJAK2阻害剤および受容体のJAK2結合領域の変異により消失するが、STAT3の存在は必須ではないことを明らかにした。さらに変異型レプチン受容体発現細胞株および各種阻害剤を用いた実験により、レプチン依存的な成長ホルモン遺伝子の転写制御機構について明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハヤブサにレプチン遺伝子が存在し、その推定レプチン分子が受容体と結合し、細胞内情報伝達を活性化させること明らかにした。これまで長期に渡る鳥類レプチンの存在の有無に関する議論を収束させた点で大きな進歩である。しかし、ニワトリレプチンcDNAのクローニングには至っておらず、そのクローニングが今後の課題である。しかしながら、25年度には我々以外にも複数の研究グループがトリレプチン遺伝子の存在を明らかにし、鳥類のレプチン研究がその単離から生理学的研究へと移行しつつある。その中でレプチンが下垂体ホルモン遺伝子発現に影響を与えることを見いだし、今後の鳥類レプチン研究の進展のための基礎的知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
ハヤブサレプチンや最近明らかにされたキンカチョウはじめ他の鳥類レプチン遺伝子との相同性比較などを通じて、代表的な家禽であるニワトリレプチン遺伝子の単離に向け、ニワトリにおけるレプチンmRNA発現組織の推定およびcDNAクローニングを行う他、レプチン機能に関する研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
塩基配列決定などcDNAクローニングに関連する研究が途上のため、生理・生化学的研究のための経費が未執行であったため。 cDNAクローニングのめどがつき、動物実験等の本格実施が期待できるので、そちらに充当して使用する。
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