研究課題/領域番号 |
24580387
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
西海 理之 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (60228153)
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キーワード | デコリン / 高圧処理 / 食肉科学 / 筋肉内結合組織 / プロテオグリカン |
研究概要 |
我々は、高圧処理による筋肉内コラーゲン線維ならびに結合組織の脆弱化には筋肉内デコリン自身の分解もしくはデコリンのコラーゲンからの解離が関与することを予想し、まずは、本研究においてデコリン分子の構造ならびに安定性に及ぼす高圧処理の影響を明らかにすることを目的とした。以上の目的から、平成24年度では、まず市販のウシ関節軟骨由来のデコリンを試料に用いて高圧処理によるデコリン分子の挙動解析を試み、高圧処理でデコリン分子は分解しないが、300~400 MPaの高圧処理でデコリン分子三次構造が変化する一方で、二次構造の顕著な変化が認められなかった。これらの結果から、高圧処理がデコリン分子の立体構造に影響を与えることが予想されたので、平成25年度では、筋肉内デコリン分子の高圧下での構造変化研究のためのウシ筋肉からデコリンを単離・精製する技術を確立することを試みた。 ブタ筋肉内結合組織からデコリンを単離したNishiumiら(1997)の方法を一部改変して、ウシ筋肉からデコリンを単離・精製できた。すなわち、ウシ胸最長筋ホモジネートを4 Mグアニジン塩酸でプロテオグリカンを抽出し、塩化セシウム密度勾配超遠心分離によってプロテオグリカンを分画の後、DEAE-セルロースイオン交換クロマトならびにゲル濾過クロマトを用いてデコリンを単離・精製した。SDS-PAGEおよびグリコサミノグリカン含量の測定により精製度などを順次チェックしていった。以上の単離・精製ステップを経ることで、平均分子量約10万のデコリンの精製を確認すると共に、コンドロイチナーゼABC消化によって約48 kDaのデコリンコアタンパク質となることを確認した。デコリンの単離精製には非常に時間がかかるため、また精製デコリンの収量も非常に低いため、平成26年度の研究に向けて、現在は大量の精製デコリンを得るための実験を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ、研究目的に基づいて研究は進められているが、当初の平成24-25年度研究実施計画よりはやや遅れている。しかしながら、平成24年度では市販ウシ関節軟骨由来のデコリンの高圧下での分子構造の変化を確かめ、平成25年度では目的とするウシ筋肉からデコリンを単離・精製する技術を確立し、現在は大量の精製デコリンを得るための実験を続けているので、平成26年度に予定している実験のための準備は整いつつある。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に予定した精製デコリンの特徴付けが一部まだ終了していないので、平成26年度では、まず、セルロースアセテート膜電気泳動法によるグリコサミノグリカン鎖の分類、プロテインシークエンサーを用いたN末端アミノ酸配列決定、ならびにゲル濾過クロマトグラフィー法によるデコリン分子の分子量測定などの実験を通じて、精製デコリンの特徴付けを行う。それと同時に、当初計画通りに、単離精製されたウシ筋肉内デコリンを用い、高圧処理による筋肉内デコリンの分解性、デコリン分子三次構造構造および二次構造の高圧下での挙動解析、ならびに高圧処理による筋肉内デコリンの安定性の解析を行う予定である。また一方で、筋肉内デコリン解析実験試料として、ウシ筋肉からのデコリン単離精製を常に行う必要がある。 したがって、平成26年度では、当初計画より補助研究者を増やして配置するために実験補助経費(謝金)を増額し、また単離精製実験と構造解析実験に関する消耗品購入費をバランス良く配分することで、最終年度の研究を推進したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度の研究進捗に対応して未使用額が77万円程度となったため、今年度は前年度未使用額を含めた金額で研究を計画し、順調に研究費を消化した。9.6万円程度の次年度使用額を計上したのは、年度末に国内学会で成果発表を行う予定であったのを、次年度にウルグアイで行われる国際会議での発表に変更し、計画的に使用を控えたためである。 「今後の研究の推進方策」を踏まえ、次年度(平成26年度)の研究費(繰越額を加えて約150万:間接経費は除く)については、物品費70万円、旅費40万円、人件費・謝金30万、その他10万円で計画している。
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