研究課題
我々は、高圧処理による筋肉内コラーゲン線維ならびに結合組織の脆弱化には筋肉内デコリン自身の分解もしくはデコリンのコラーゲン線維からの解離が関与することを予想し、まずは、本研究においてデコリン分子の構造ならびに安定性に及ぼす高圧処理の影響を明らかにすることを試みた。以上の目的から、平成24~25年度において、市販のウシ軟骨デコリンの構造解析およびウシ骨格筋からのデコリン単離・精製技術の確立などの事前実験を完了させた。したがって、平成26年度では、ウシ骨格筋から実際に単離・精製したデコリン分子の高圧下での立体構造の解析を試み、高圧処理による筋肉内結合組織の脆弱化との関連性を検討した。高圧処理によるウシ骨格筋デコリンの分解性をSDS-PAGEで確認したところ、高圧処理はデコリンコアタンパク質の分解、GAG鎖の解離およびGAG鎖の分解を引き起こさなかった。高圧下蛍光スペクトル測定により、400 MPaまでの昇圧に伴う蛍光強度の低下と吸収極大のレッドシフトが認められ、また圧力解放後のこれらの値が初期値に戻ったことから、400 MPaまでの高圧処理によってデコリン分子立体構造は部分的に可逆的変化を受けることが示された。また、デコリン分子の高圧下表面疎水性測定の結果、400 MPaまでの昇圧に伴う表面疎水性の低下と圧力解放後の初期値までの復帰から、デコリン分子の表面疎水性も400 MPaまでの高圧処理によって可逆的に変化することが示された。一方、高圧処理したウシ骨格筋デコリン分子の表面SH基量は各処理圧力でほぼ一定であったことから、デコリン分子のジスルフィド結合は高圧処理によってほぼ変化を受けなかった。
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