研究課題/領域番号 |
24580388
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
下里 剛士 信州大学, 農学研究科, 准教授 (00467200)
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研究分担者 |
米倉 真一 信州大学, 農学部, 助教 (40443113)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | オリゴ核酸 / マイクロカプセル / ナノカプセル / オリゴ核酸カプセル |
研究概要 |
【目的】微生物由来のゲノムDNAや、その配列に基づき化学合成された、非メチル化CpGオリゴ核酸(CpG ODN)は、感染症、ガン、アレルギー、炎症性疾患の予防および治療などを目的としたワクチンアジュバントとして期待されている。しかしながら、CpG ODNは優れた免疫機能を有しながら、経口的に摂取すると、胃酸や消化酵素の影響により分解されてしまうという最大の弱点がある。本研究では、この課題に取り組み、炭酸カルシウム粒子へODNを包摂したODN-炭酸アパタイト粒子複合体「ODNマイクロカプセル(ODN cap)」を開発した。さらに、ODN capの化学的および免疫学的特性を解析し、ODN capの経口投与試験に向けた基礎的知見を得ることを目的とした。 【方法】ODN capとカプセル化していないNaked ODNを、DNA分解酵素、強酸(pH 2.0)、強アルカリ(pH 12.0)、超音波、高温・高圧条件下で処理した。さらに、ODN capとNaked ODNを用いてマウス脾臓細胞を刺激し、各種免疫関連遺伝子の発現量についてリアルタイムPCR法により定量解析した。 【結果と考察】ODN capはNaked ODNと比較して、DNA分解酵素、高温・高圧処理に対して非常に高い耐性を示し、強酸処理により緩やかに分解された。すなわち、ODN capを経口的に摂取した場合、腸管局所に到達する可能性が示唆された。また、ODN capはNaked ODNと同様にIL-1α, IL-1β, IL-6, TNF-α mRNAの発現を誘導したことから、カプセル化によるODNの免疫刺激性は失われないことが明らかとなった。今後は、ODN capの腸管粘膜における局在性と標的細胞を明らかにし、疾病モデルマウスを用いたin vivo経口トライアル試験を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画初年度(平成24年度)では、オリゴ核酸カプセルの構築を最大目標とした。炭酸アパタイトナノ粒子にオリゴ核酸を包摂した「オリゴ核酸カプセル」の構築に成功し、その化学的特性を明らかにした。また、カプセル化によるオリゴ核酸の免疫機能性が失われないことも明らかにしたことから、in vitroの系で、オリゴ核酸の有用性について一定の評価を得ている。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1. オリゴ核酸カプセルは優れた免疫調節作用を有しているのか? 強い抗アレルギー作用を有していることが明らかとなっているオリゴ核酸を単体で用いた場合と比較して、オリゴ核酸カプセルの抗アレルギー効果について評価する。オリゴ核酸カプセルを腸管免疫細胞に直接処理する他、研究代表者が開発したDNA免疫評価システムを用いて免疫機能の評価を行う。 2. オリゴ核酸カプセルは実験動物においてアレルギー症状の軽減効果があるか? アレルギーモデルマウスを作出し、オリゴ核酸カプセルを経口投与した場合のアレルギー症状の軽減・改善効果についてアレルギースコア法、クリニカルスキンテストにより評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度におけるオリゴ核酸カプセルの化学特性解析の結果より、in vivo経口投与試験に向け、オリゴ核酸カプセルの利用性について一定の成果を得た。また、オリゴ核酸カプセルの合成技術に飛躍的な進展がみられ、大幅なコストダウンに繋がったことから、研究費に残額(約60万円)を得るに至った。 以上の成果を踏まえ、平成25年度はアレルギーモデルマウスに対する経口投与試験を開始する。平成24年度における残金を有効に使用する目的で、当初の予定よりも、動物実験における群内頭数を増やして実験を実施する。実験用動物(マウス)購入費=約40万円、動物飼育・管理費(餌代、床敷代、ケージ、水筒など購入費)=約40万円とする。また、オリゴ核酸カプセル合成費=20万円とする。その他消耗品(試薬、抗体、プラスチック消耗品など)=40万円とする。研究成果発表(学会発表)旅費=10万円とし、計150万円/平成25年度の研究費仕様計画とした。
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